「滑稽で虚しく優しい気弱な復讐劇」ブルー・リベンジ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
滑稽で虚しく優しい気弱な復讐劇
主人公ドワイトは青いオンボロ車を寝床にしているホームレスだ。両親が殺害されたことが原因かわからないが、とても無気力に見える。
復讐を開始するドワイトだが、彼はよくある復讐者のように怒り猛りギラギラしたりはしない。無気力を通り越して放心しているようですらある。しかも元軍人だったり元警察官だったりもしない、恐らく銃を撃ったことすらない普通の男だ。
スキルもお金もない彼の復讐準備は滑稽を極める。はっきり言ってマヌケだ。いや、マヌケに見える。それは他の映画の復讐者のようなスマートさがカケラもないからで、穏やかで気弱な、ヒーローでもアンチヒーローでもない普通の男のリアルを感じずにはいられない。
作品のジャンルはバイオレンスアクションということになるだろうが、雰囲気はとても穏やかだ。
ハートフルなヒューマンドラマようなのようですらある。
音楽も控えめで、荒々しかったり高揚させるようなものはない。
しかも、猛らない主人公。
この総てが合わさったときに、悲しみと虚しさの先に優しさや思いやりがみえてきて、なんとも言えない不思議な感覚に襲われるのだ。
冒頭30分で何も感じない人はもう視聴をやめていい。最後まで観てもどうせ何も感じない。
超絶面白いというわけではないが、カンヌで賞をとるのも納得の、オンリーワン感がある作品だった。
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