「【ケン・ローチ監督の経済的弱者もしくは体制に批判的な人に対する、謂れなき迫害を描いた作品。当時、アイルランドを支配していた富裕層及びカトリック教会が行った事をシニカルに描き出した作品。】」ジミー、野を駆ける伝説 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ケン・ローチ監督の経済的弱者もしくは体制に批判的な人に対する、謂れなき迫害を描いた作品。当時、アイルランドを支配していた富裕層及びカトリック教会が行った事をシニカルに描き出した作品。】
■アメリカで暮らしていた元活動家のジミー・グラルトンが、10年ぶりに祖国・アイルランドの地を踏み、故郷に帰って来た。かつて地域のリーダーとして絶大な信頼を集めたジミーは、気心の知れた仲間たちに歓待され、昔の恋人・ウーナとも再会を果たすが…。
◆感想
・私は、ケン・ローチ監督監督作品は、「わたしは、ダニエル・ブレイク」と「家族を想うとき」を劇場で観た所謂、ケン・ローチ監督に出会ったのは可なり後期の人間である。
だが、両作品とも、今でも覚えているが、観賞中及びその後の衝撃は強く、”こんなに凄い社会派の作品を作る監督がいたんだ!”と言うモノであった。
当然の如く、ケン・ローチ監督を師匠と仰ぐ、邦画を代表する是枝裕和監督と、ケン・ローチ監督とのNHKで流してくれた対談は、ビデオで録画して、観たモノだ。
・で、今作。
私が全く知らなかったアイルランドにおいて唯一、裁判も開かれずに国外追放となったジミー・グラルトンの生き様を描いた作品である。
元活動家の彼がNYから数年振りに、故郷に戻った際の、彼を温かく出迎える人たちの姿と、快く思わない地主や、カトリック教会の司祭たちの態度の違い。
・村の人達の愉しみの場であったダンスホールを再開する、ジミー・グラルトン。その場で歌やダンスを楽しむ町の人たち。ジミー・グラルトンが、且つての恋人と思われるウーナに贈ったドレスを彼女が着て、夜中に二人でダンスをするシーンは素晴らしい。
・だが、彼は理由なき理由で、国外退去を命じられてしまう。ダンスホールも、焼失してしまう・・。
ー そんな彼を、見送る人たちの温かい眼差し。
確かに彼は、一時的にせよ、村の人達に”自由”の楽しさを与えたのだ。-
<今作で描かれた時代から数十年後、カトリック教会の一部の司祭が、児童に対して長年、性的虐待を与えていた事実は、幾つかの映画で描かれている通りである。
カトリック教会の厳格な思想を否定する気は毛頭ないが(思想信条の自由は、当然守られるべきである。)、余りに締め付けすぎる思想は、破綻を来すのではないかな・・、と思った作品である。
人間であれば、許容できる範囲で生の喜びを得る場が有っても良いではないか!と思った作品でもある。>