「分断を煽り、己の支配力を強化したい誰かさん。」ズートピア レントさんの映画レビュー(感想・評価)
分断を煽り、己の支配力を強化したい誰かさん。
ディズニー映画と言えば、毒にも薬にもならない万人受けする映画ばかりでつまらないと思っていた。人種問題を扱った「タイタンズを忘れない」にはがっかりさせられたものだが、本作は予想に反してエンターテイメントとしても社会風刺ドラマとしても大変良くできた作品だった。
まさに人種差別問題渦巻くアメリカの今を描いている。一見、愛らしいキャラクターたちが画面狭しと活躍しまくるが、根本的な本作の主題は重々しい現実的な問題である。
本作の登場キャラクターはすべて擬人化された動物たちで、人間のように進化した動物たちが文明社会を築きあげ、草食動物、肉食動物はもはや補食し補食される関係になく互いが共存している。そんな理想郷のようなズートピアが舞台だが、理想郷と思われたズートピアにも現実社会同様に問題があった。
ズートピアでは誰もがなりたいものになれるといった、まさにアメリカンドリームを謳いながら現実にはウサギが警官になれるわけがない、狐は狐の街の店でアイスを買え、などと人種差別ならぬ動物差別が当たり前のように蔓延している。
極めつけは本作の黒幕が肉食動物は野性的本能ゆえに文明社会になってもその本能から狂暴になるという一種の偏見を利用して分断を煽り、ズートピアを意のままに支配しようとするところである。肉食動物はさしづめ現実社会での有色人種といったところか。
この黒幕は本作の公開時には未だ存在しなかったトランプ大統領のようであり、この点でも本作の先鋭的な脚本は見事というしかない。
けちのつけようがない本作だが、しいて言うなら、ズートピア内でも草食動物が肉食動物に対して生理的に嫌悪感を持っていることが伏線として描かれていれば黒幕の唐突感は少なかったかも。
削除されたレビューを再投稿
