劇場公開日 2015年12月12日

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「どこかで人は変わる!」独裁者と小さな孫 Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0どこかで人は変わる!

2021年5月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2004年。モフセン監督がこの映画をどう製作したかが、ボーナス版についていたので観てみたが、根気がないと作れないなと思った。孫とマリアのダンスの撮影場所や軍や人々が大統領と孫の乗っているリムジンかなにかに襲ってくるシーン。監督のこども、ハナやメイサンも指揮にあたるが、もちろんモフセンが総指揮者。ジョージア(グルジア)での撮影で、監督たちは片言英語で指示を与え、通訳がそれをグルジア語に訳している。ここでは役者はグルジア語だけをはなす。モフセンは語学は分からなくても、孫が使うグルジア語の音で感情を理解しているんだと思う。いやあ、これは大変な撮影だったねえ。なぜ元帝政ロシア領で革命運動のあったグルジアを選んだのか?真相はモフセン監督のインタビューでも探して見ない限り私には分からないけど。

この映画での大きなトピックは復讐の連鎖、負の連鎖を断ち切ってろう。そして、人間にチャンスを与えて、人間更生を『この大統領を人民が創立する民主主義国家のなかで踊らせよう。』と。このことは民主主義国家のなかで大統領も、一市民として生きさせることだと判断した。これは全く大日本帝国傀儡政権の皇帝溥儀が投獄されたが、その後一般市民として生きていったことと同じようだ。
囚人だった一人の言う『そこから何も生み出せない。』彼も、大統領に裁かれた人の一人であるのに。でも、この囚人だった人は大統領と一緒に荒野の旅を続けて、人柄に触れている。一緒に、ウォッカを分けて、タバコを吸って、ギターを奏で歌い踊ったのを見て聞いて、このことから大統領が良心のある人間に変わっていくのを見届けている。(最後まで残っていた二人の囚人だった人は大統領だとわかっていたと思う。私は勝手に目つきや言動で判断しただけだが)このシーンは大切なシーンで、ウォッカが人から人へと渡されるシーンが長く感じたと思うが、このシーンから人間が変わっていく。連帯感の中から、苦しみ、すこしの喜びをお互いに味わっている姿なのだ。この続く荒野の旅は人間に変化を見せてくれる。特に好きなシーンは大統領が元囚人の足の傷を洗って手当てするシーンだ 。この意味は特に大きい。大統領が謙虚になったという意味を指すから。
荒野の歩きは一番いいシーンだ。この展開にグッとくる。

傀儡政権の溥儀は一般市民として生きたが、その後の中国政府は革命後共産党政権になった。モフセンが若い頃4?年間投獄させていたと聞いた。この時代は皇帝シャーでその反逆罪で投獄されたと記憶する。でも、その後の政権は民主主義?を学んだはずの原理主義者ホメイニである。でもホメイニ政権のお陰で、モフセンは社会復帰をしたわけだが、この映画のストーリーと似ている。モフセンはチャンスを与えられた。でも、この大統領は? モフセンは平和を訴えるという自分の主張のある映画作りをしているわけだが、この荒野の中で人の命の大切さに気づき、人間が変わっていっている大統領は? 一般市民だからチャンスを与えられた? 大統領という人にチャンスは?

孫への道は「後ろ振り返るな前(海)を見ろ」だった。

最後に一言、負の歴史を学ぶ必要性をしみじみ感じたよ。そうしないと同じことを繰り返すからねえ。

Socialjustice