「見事に「過不足」のない作品」独裁者と小さな孫 シーナマサヨシさんの映画レビュー(感想・評価)
見事に「過不足」のない作品
「独裁者と小さな孫」素晴らしかった。
どんなジャンルの映画でも共通する「良い映画の条件」は「過不足のないこと」。
ここ何年かの映画の中では「メランコリア」「二つ目の窓」「シンプル・シモン」「妻への家路」と並んで、その塩梅が見事だった。
「独裁国家」の国民のさまざまな本音や歪みが複層的に描かれている。それは分厚いミルクレープのように無数の層を形作る。そしてその層の一枚一枚がデコボコしていて、重なったそれらを俯瞰すると無数のグラデーションが現れて、その「まだら」はいろんな問いを浮かび上がらせる。
けれど創り手は主張も答えも提示せず、材料だけを最高の状態でこちらに預けてくれる。
創り手と作品を共有しているような感覚。それを感じられる作品はそうはない。
そんな稀有な作品を最高の環境で観られたことに感謝。
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