「原題は『白日焰火』、英語題名「Black Coal、Thin Ice」日本語題名「薄氷の殺人」どちらもこの映画の本質を伝えてはいないぞ。見事に欧米版から中国版に換骨奪胎したフィルム・ノワールの佳作。」薄氷の殺人 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
原題は『白日焰火』、英語題名「Black Coal、Thin Ice」日本語題名「薄氷の殺人」どちらもこの映画の本質を伝えてはいないぞ。見事に欧米版から中国版に換骨奪胎したフィルム・ノワールの佳作。
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①最初のショットに魅せられた。「ああ、いいなぁ」と。その後もところどころにハッとしたり魅せられるショットあり。映画だ。②中国でこのような良質のフィルム・ノワール、ファム・ファタールものが作られるとは驚き。③謎はすべて解き明かされる必要はない。推理ものではないんだから。アメリカのハードボイルド小説や映画も謎解きよりも業に翻弄される人間達を雰囲気たっぷりに描くのが主眼なんだから。④考えてみれば事件を追う刑事(普通は探偵)が、事件の核心に近づくにつれ事件の中心にいる女に惹かれていくところは古典的なハードボイルドものそっくり。⑤桂纶镁は質素な佇まいでほぼ全編を通すが、遊園地の観覧車で廖凡と愛し合った翌朝出かける前に赤い口紅を塗ったところでこの映画のファム・ファタールとしての本性を表す鮮やかな演出。口紅というところは『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1944年版)へのオマージュか。⑥そしてラストシーン、盛大にビルの屋上から打ち上げられる白昼の花火(白日焰火)、これは愛しそして自らの手で追い詰めた女への送り火、見事に『farewell, mylovely』へのオマージュシーンだ。
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