「ツッコミ所がありあまる [各所修正]」ストレイヤーズ・クロニクル 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ツッコミ所がありあまる [各所修正]
酷評なので、本作を気に入ってる方は読み飛ばしてください。
今回ホントにボロクソ書いてます。
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かれこれ2年振りに1.5判定を付けさせていただいた。
正直、悲惨な出来だと思う。
あらすじだけ聞くとどうしても『X-MEN』が頭に浮かぶ訳だが、
アクションシーンは10年以上前の作品である『X-MEN』1作目にすら及ばない。
だが、まあ、そこは僕もハナから期待していない。
ひと昔前とは言っても予算も物量もハリウッドに敵う訳はないし、
予告を観た時点で、日本のアクション映画においても
少なくともトップレベルのものにはならないだろうと感じていた。
(実際は邦画の中でも中の下くらいの印象)
僕が期待していたのは、とんでもなく豪華な若手実力派キャストの演技やドラマ面である。
岡田将生、染谷将太、成海璃子、松岡栞優、黒島結奈、本郷奏多……
これだけ魅力的な若手のキャストが揃うことなんてそうそう無いだろう。
……で、
これだけ魅力的な若手のキャストを揃えておきながら、なんなんこの致命的なつまらなさは。
「シナリオはイマイチでも役者はカッコいいorキレイだから◎」という意見の方もいるだろう。
だが、逆にこうアタマに来た人はいないのだろうか?
「人気も実力もあるキャストをこれだけ揃えて、こんな無様な出来かよ」とは?
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観客置いてきぼりな上にツッコミ所山盛りの脚本。
あまりにも場面展開やセリフが不自然過ぎて、
“破綻”に脅える能力者たちの葛藤に感情移入するどころか、話の内容すらろくに頭に入ってこない。
スバル率いる主人公たちは一度あの組織を離れ、その時に何かしらの事件があったらしいが、
それについては何やら深刻な雰囲気を匂わせるだけで全く語られない。
なので最後の「飛び出す勇気がなかった」云々のくだりも、何をそんなに悲壮な顔をしているのかサッパリ。
“アゲハ”のメンバーも、いつ頃組織から逃げ出したのか、
そもそも彼らが登場シーンで何の為に闘っていたのか、
“破綻”が迫った今頃になって当時の化学者を捜し始めたのは何故なのか、行動が色々と謎過ぎる。
主人公たちをヒロイックに見せようとしたのであろう演出も不自然。
銃弾を弾くほど皮膚を硬化できる男が何故にいきなり能力を解く?
未来視できるとはいえ、動画サイトで格闘技を習っただけの男が
常人離れした怪力男とマトモに組み合ってどうやって絞め落とせる?
それにどの人物も、決め台詞を吐くまでは絶対に死なない。
主人公たちを操るあの組織も何やってんの 。
人類の8割を死滅させるウィルス保持者を始めとした
とんでもない能力者を扱っていながら、その管理も追跡もヌル過ぎだ。
“アゲハ”に狙われてる化学者がいると分かってたクセに、“アゲハ”どころか
能力も何もない体に爆弾巻き付けた変人ひとり検知できないザルなセキュリティって何?
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モブ(群集)が登場するシーンの捌き方もヒドい。
突如現れた爆弾男を恐怖ゼロの無表情で見つめるエキストラやら、
血まみれで銃を向けあう男たちはおろか銃声にすら無反応な公園の群衆やら。
(「見ろ……誰もが無関心だ……」とか言ってたがあんなのゾンビ以下の反応レベルじゃん)
一番バカバカしかったのはあの長ったらしい爆弾男のシーンだ。
「原発は危険だ!」とか「未来が見えない!」とか、“世界の知識人”の前で今どき
中学生の弁論大会ですら語られないような薄っぺらい主張をし出す所は吹飯ものだし、
一触即発の場面で突然ダラダラ過去語りをし出し、説得力ゼロの交渉を試みる伊原剛志も訳が分からん。
後々の展開がスムースになるように過去語りさせたかっただけじゃねえか
というシナリオ上の作為と滑稽さしか感じない。
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僕がこの映画を嫌う理由はこの安直な作為だ。
どの人物もどの人物もどこかで見たドラマの切り抜き
のような葛藤を訴えるばかりで、何一つ心に迫ってこない。
キャラクターが血肉の通った人間に見える瞬間が殆ど無い。
本作で唯一成功しているのは予告での客寄せくらいのものだろう。
観客置いてきぼりのシナリオ、中途半端なアクション、
深刻そうなだけで少しも気持ちの走らないドラマ、
不自然さに笑いすら漏れる場面展開。
観ていて苦痛だった。
2015年6月末現在で、今年の個人的ワースト1。
主演陣の頑張りと、良い意味で力の抜けた染谷将太の前半の演技に判定0.5プラスで、1.5判定。
<2015.06.27鑑賞>