劇場公開日 2016年1月16日

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「作品冥利に尽きる…のようなもの」の・ようなもの のようなもの 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0作品冥利に尽きる…のようなもの

2022年12月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

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森田芳光監督のデビュー作の続編…のようなもの。
…ではなく、35年後を描いたれっきとした続編。

師匠の家で住み込み修行中の冴えない若手落語家、志ん田。
ある日師匠たちから、かつて一門にいた志ん魚を探すよう命じられる。志ん魚がお気に入りだった会長のご機嫌取りの為に高座に復帰させようというのだ。
手掛かりや目撃情報を基に探し出したものの、落語家は引退し冴えない中年男になっていた。渋る志ん魚を復帰させる為、志ん田は彼の下で共同生活を…。

筋があるように見えて、森田監督ならではシュールでドタバタの支離滅裂だった前作に比べ、一応今回は筋や目的は見え、前作より見易い下町人情コメディになっている。
前作の森田監督のトリッキーな作風が好きだった人には違和感あるかもしれないが、ベタだけど無難な作りかな。

公開の2016年には森田監督はすでに死去。(2011年没)
前作オマージュや森田監督へ捧げられている点が随所随所に。
開幕シーンや冴えない若手落語家の主人公などまさにそう。
尾藤イサオ、でんでん、伊藤克信らが同役で続投。前作で下手な落語より下手な演技しか印象に残らなかった伊藤はやはり相変わらず上手いとは言えないが、いい感じで中年男の味わいを出していた。
今回主演の松山ケンイチ、ヒロインの北川景子(メチャハツラツ魅力的!)ら森田監督縁のキャスト。他にも野村宏伸、佐々木蔵之介、塚地武雅、鈴木京香、仲村トオル、三田佳子ら森田監督縁の面々。
監督は長年森田監督作品で助監督を務め本作でデビュー、音楽も常連の大島ミチル。
本当に森田監督がどれほどの人たちに愛されていたか分かる作品。

今回も落語そのものへの醍醐味は薄い。
それに関わる人たちと周りの人たちのほのぼのとした人間模様。
下手でも味があると言うか、(個人的に)ビミョーだった前作からオマージュと愛溢れる続編が作られて、作品冥利に尽きるというもの。

近大