劇場公開日 2016年5月14日

  • 予告編を見る

「見る側も物語の中に入るか否かで感動度が違うはず。」世界から猫が消えたなら takonomeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見る側も物語の中に入るか否かで感動度が違うはず。

2016年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

ファンタジックな設定に対して意外に淡々と話が進み、中盤までは「ふ~ん」という感じだったけど、現在と回想がぐるぐる混ざり合って、主人公のこれまでの日々を徐々に知っていくうちに、いつの間にか深く深く感情移入させられてた。

こういう静かな映画は、見るときのシチュエーションや心理状態によって印象が変わるだろうな。
元気ハツラツなときにテレビで流し見たら、もしかすると、「うん、各人物がじんわり愛しくて温かみのある映画だね」ぐらいかも。
「今日もあんま大した作業できなかったなぁ、自分なんてイモムシだ…」みたいにイライラ悶々とした感情がジェンガのように積み上がっているときに一人、映画館でじっくり見ると、
鎖骨に涙が溜まるほど、もはや涙なのか水なのか後半よくわからなくなる、涙垂れ流し状態。
映画を見ながら自問自答して、せわしない心もリセット完了。
何気ない日常には愛が溢れていて、そんな日々の積み重ねが自分を形作っていることに気付かされ、
イモムシなりに明日はもうちょっとだけ頑張れるかも、と思えたのでした。

****
ちなみに、回想シーンは断片的に挟み込まれますが、何かを見たときにそれに関連する過去がふと頭をよぎる、そんな感覚が再現されていて、
主人公のその時その時の心情を想像していたら話の流れがすんなり心に入ってきます。
その他、言葉で詳しく説明する紙芝居のような見せ方でなく、映像で匂わす実に映画的で粋な見せ方がされているので、具体的な説明がない部分は観客の想像力に託されています。
主人公の立場になって映像から情報を感じとる必要がある点が、より深い没頭感を生んでいるのですが、
その一方、紙芝居の観客みたいに物語の外から説明をただ待っていると置いてきぼりになるはずです。

takonome