「コメディに隠された、移民問題の根深さ」サンバ 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
コメディに隠された、移民問題の根深さ
『最強のふたり』のエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの両監督と主演のオマール・シーが再び結集した作品。
軽妙なリズムで物語は進んでいきますが、描いているのはじつは深い、フランスの移民問題を描いた作品なんですね。正面から“移民”と言う問題を描くと、固くて、劇映画というよりもドキュメンタリーの様になってしまいがちですが、上手くシセとアリスの関係を絡み合わせて、コメディ感たっぷりに難しい移民問題を描いています。上手いです。
シャルロット・ゲンズブールが、燃え尽き症候群のキャリア女性を非常に上手く演じています。突然キレるシーンにはちょっと笑いました。
でも、何と言ってもこの作品のキモは、オマール・シーですね。『最強のふたり』での第37回セザール賞主演男優賞は伊達では無いですね。運命に翻弄される不法移民の男性を上手く演じています。
日本に居ると、“移民”と言う言葉はどこか遠い世界の話ですが、フランスでは普通に身近な問題なんですね。いわゆる3K的職場で働くのは、そのような人々なんですね。先に「日本ではいみんという言葉は遠い世界」と書いてしまいましたが、コンビニやファストフードの現場を見ると、実際にはそうでも無いかもねぇ。建前としては、日本では不法移民ではなくて留学生ということになっているけど、実態としては留学生の名を借りた出稼ぎ者であったりしますからねぇ。
物語の最後には“共和国宮殿”とたぶん読む、国家憲兵に警備されている所にサンバは居ましたよね?あれって、エリゼ宮?サンバが出てくる玄関も、エリゼ宮風に見えるんだけど?そう言う所が、移民問題の根深さと広がりを示しているような気がしました。移民が居ないと、国が成り立たないと言うことなんですかね。