「タイトル画面と ギターと あの歌だけで。」映画 深夜食堂 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトル画面と ギターと あの歌だけで。
劇場版ではなくテレビで放映された短編を、
=こぢんまりとしたエピソードを集めた「作品集」で鑑賞。
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この手の「類似ドラマ」は雨後のタケノコだ。
でも元祖「深夜食堂」には敵わない。
タイトルの画面・・
新宿の大ガード。川のごとく流れゆくタクシー。横断歩道と、歌舞伎町のネオンの海。
冒頭のそのタイトルバックは「スキップする事が出来ます」と、毎回各章ごとに画面表示が出る。
しかし、《あのタイトルを見るために》ここに来ている僕がいる。
あの光景と ギターと あの歌だけで、僕はしんみりと満たされるのだ。
癒されるのだ。
それは僕が30年、夜勤生活をしているせいも必ずあるだろう。
みんなが寝ているその真夜中に、いまも起きて生きている人たちの物語だ。
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むかしうちの息子を連れて歌舞伎町に行った。
小学生の息子はネオンサインの洪水に驚きを隠せない。
「いつかお前も東京で暮らす日があるだろう」
「歌舞伎町はヤクザや ぼったくりも暗躍する夜の街」
「決して軽はずみに一人では来てはいけないよ」
そうやってレクチャーをしつつ
通りを深く分け入って、しゃぶしゃぶの食べ放題のお店に二人で入った。
酒をぜんぜん頼まないで 肉ばかりを際限なく、本当に際限なく食べる僕ら親子に、おばちゃんは、最後は鬼の形相で怒ったのだ。
はて? ついさっきまでは
「あらあらお父さんと来たの?いっぱいたべていってねー」とニコニコ顔だったのになぁ。
二人で肩をすくめて退店し、笑った。
小林薫は
タバコをつけ、時にそっぽを向いて客の話が聞こえない振りをする。
時には狭いカウンターを挟んで、前掛けの腰に手を当て、客の真正面で立つ。
至近距離でこちらの顔を見る。
古い店の2階でマスターは暮らし、彼は窓辺でタバコを吸う。
暖簾を掛け、提燈を灯す。
日本の深夜労働者は 600万人だそうだ。