「良くも悪くもドラマと同じ温度感。 わざわざ映画にする意味あるのか…?」映画 深夜食堂 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くもドラマと同じ温度感。 わざわざ映画にする意味あるのか…?
小林薫主演の大人気人情グルメドラマ『深夜食堂』の劇場版第1作。
東京の片隅で、深夜だけ営業している定食屋「めしや」。様々な事情を抱える人々が、今日もこの店に集う…。
○キャスト
剣崎竜…松重豊。
野口…光石研。
小暮…オダギリジョー。
本作からのキャストとして、訳あって「めしや」で働くことになる女性、栗山みちるを演じるのは『フィッシュストーリー』『君に届け』の多部未華子。
「めしや」に置かれていた骨壷の持ち主、塚口街子を演じるのは『もののけ姫』『ゲド戦記』の、レジェンド女優・田中裕子。
みちると因縁のある男、長谷川タダオを演じるのは『さくらん』『ゴールデンスランバー』の渋川清彦。
原作は未読だが、ドラマ版はシーズン3(本作が公開された段階での最終シーズンであり、この後シーズン4&5が作られる)までは鑑賞済み。ドラマ版では何度も涙しました…😭
監督はドラマ版でも監督として参加している松岡錠司さん。
記念すべき第1話や、マイベストの1つである第6話、涙なしでは観られない第11話、胸が締め付けられる第20話、谷村美月がキュートな第24話など、彼が監督したエピソードは名作が多い。
ドラマ版が好きなだけに、映画化には向かない作品だよなぁ、とは思っていた。
都会の片隅で生きる人々の、良くも悪くもこじんまりした物語の作品なので、30分という尺ならまだしも120分という長尺はちょっと厳しいんじゃないの?なんて。
製作サイドもそう思ったのか、本作は3つのエピソードからなるオムニバス作品となっている。
…うん、気持ちはわかる。1つのエピソードを120分で展開するのは厳しかったんだろう。
でも、3つの独立したエピソードを並べるだけじゃ、ドラマとなんの違いもないじゃない。
映画独自の『深夜食堂』が観たかったのに、ドラマの延長を観させられたらやっぱりガッカリする。
「めしや」で持ち主不明の骨壷が見つかる…。という掴みは最高だと思うんです。
これまでとは一味違う、サスペンス的な展開が期待できた。
でも、結局この骨壷のエピソードがなんか有耶無耶、っていうかギャグ的な展開で終わったのにはガッカリ…😞
せっかく掴みは良かったのに、それを上手く活かせていなかった。
オムニバス形式にするのであれば、それぞれのエピソードが最終的に骨壷のエピソードに集約していくとか、そういう仕掛けが観たかった。
ただ短編のエピソードを並べただけじゃあねぇ。ドラマ観ればいいじゃんって話だ。
特に第1話の「ナポリタン」。あれ、特に面白くないし感動もしないし、なんで映画にしたのか不明。
第2話の「とろろご飯」が本作の中心となるエピソードであり、尺も1番長い。たしかにこのエピソードは中々良い。
多部未華子って特別美人って訳では無いんだけど、すごく華がありますよね🌸✨
本作の多部未華子もすごく魅力的だった。ドラマ版でレギュラー出演して欲しいくらい。
彼女の物語をもっと掘り下げて、90分くらいの中編にしてしまえば結構良い映画になったんじゃないかな。
第3話は如何にも『深夜食堂』らしい、ビターでシビアな物語。
こういうエピソードは嫌いじゃないんだが、ドラマで十分だな。
特にレギュラーメンバーの紹介なんかはないんだけど、一見さんでも十分ついていけると思う。元々ストーリーのあるドラマじゃないからね。
むしろ全くドラマを観たことがない人の方が、「めしや」の雰囲気に新鮮味を感じることが出来て楽しめるかも。
いずれにせよ、個人的には満足することが出来ない作品だった。
やっぱり『深夜食堂』は、30分くらいの尺をのんびりと観るのがお似合いだと思うなぁ。