「監督、役者、設定の期待値に対して物足りなさを感じた作品。」泣く男 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
監督、役者、設定の期待値に対して物足りなさを感じた作品。
良かった…とは手放しで言えず。
映画「アジョシ」のイ・ジョンボム監督作品にしては物足りなさを感じる作品でした。
物足りなさの源泉は設定と展開。
映画「アジョシ」にグッときたのは主人公のチャ・テシクの素性が分からなかった点。
幼女と可愛そうな母に同情して優しさを見せる彼。
体格の良さや底知れぬ雰囲気はあるものの真の姿は見せない。
そんな彼が溜めて溜めて溜めて…鏡の前!!
その急激な落差にグッときていました。
対する本作は冒頭から素性も手際もフルオープン。
周りの評価や対応で主人公ゴンの強さが丸見え。
彼の心境の変化で落差を生み出そうとしていますが。
如何せん冒頭から優しさが見え隠れしているためカタルシスには至りません。
幼子を殺したことに何一つ感情を動かされないが…という展開の方が良かったやもしれません。
随所に差し込まれる英語の遣り取りもガッカリ。
米国で親に捨てられた彼が英語も、母国である韓国語も、という設定は分からなくはないですが。
言葉の壁的な個所は大抵シックリ来ておらず無駄な場面のように感じてしまいました。
特に御手洗の場面、本当に必要な場面でしょうか??
アクションシーンも何処かモッサリ。
中盤の古い集合住宅内での戦闘は流石韓国映画という部分がありました。
特に玄関前での何度も突き刺す場面はグッときました。
また高低差のある銃撃シーンも迫力があって良かったです。
が、終盤の戦闘は無駄に冗長。
今更ダイ・ハード的な他チーム鬼ゴッコを見せられても。
主要人物一人一人に見せ場を作ったが故に変に長くモッサリしてました。
何より腹落ちしなかったのが話の中心となる妻チェ・モギョン。
彼女が話に絡んでいるようで、あんまり絡んでいない。
巻き込まれ翻弄される彼女が助言を得て立ち上がる場面。
本来はアガるはずなのですが。
それまで蚊帳の外におり状況も然程呑み込めていない彼女の行動には然程アガらず。
行動の対象となる相手の選択を間違えたのではという感すらありました。
監督、役者、設定の期待値に対して物足りなさを感じた本作。
敵役のキム・ヒウォンは相変わらずイイ顔をしていました。
この何処か卑屈で凶暴性を秘めた顔のインパクトは作品に華を添えていました。
それ以外の役者の顔力は総じて並程度でした。
「チャン・ドンゴンガ、トゥキダカダカラー!」の方。
オススメです。