「反戦映画なのかエンタメ映画なのかホラー映画なのか」野火 だるちゃさんの映画レビュー(感想・評価)
反戦映画なのかエンタメ映画なのかホラー映画なのか
元々は文筆業だった生真面目な主人公が、奇跡的にレイテの激戦地で生き延びてしまい、極限の飢餓状態に至った時にどこまで正気を保てるかを問う作品です。
たまたまアマプラに出ていたのを見つけ、チラ観してみたら、続きが気になって結局最後まで観てしまいました。
ある意味ロードムービー的な構成で、観客を飽きさせずに惹きつける演出という点において、エンタメ映画あるいはホラー映画の要素としては優秀だと思います。
ただ、だからと言って、製作意図が反戦映画として受け入れられるかという点においては違和感を感じました。
ホラー映画さながらのグロいシーンを立て続けに見せ付ける事で、人間を狂気に駆り立ててしまう戦争がどれ程の悪なのかという事を観客に訴えたいというのが、塚本監督の製作意図との事でした。
その意味では本来は反戦映画であるはずなのですが、その思想よりはむしろ、グロ演出が仇となり、戦争を題材にしたホラー映画の様な印象を受けてしまい、反戦の意図が逆に薄れてしまった気がします。
数日前に、海戦後にで漂流する人命を1人でも多く救おうとする、人道的な反戦映画の「雪風」を劇場で鑑賞した直後なだけに、何とも言えないキャップを感じてしまった。
反戦の気持ちを観客に喚起したいという意図なら、極度にグロい演出の本作よりは、どんな状況でも人道を見失わなわなかったという優しいタッチの雪風の方が成功しているのでは、との印象でした。
コメントする