劇場公開日 2015年7月25日

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「リリー・フランキー演じるところのイヤラシサ」野火 ココナッツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リリー・フランキー演じるところのイヤラシサ

2016年2月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

昨日、川越スカラ座で、『野火』監督塚本晋也を観た。
 後半のモブシーンでは血肉飛び散る質感がかなりリアルなのである。言い換えれば“戦争スプラッタームービー』と言える。鮮やかな質感がリアルに映し出されるのは市川昆監督のモノクロ版とは明らかに違っていた。
 人間は極限状況に追い込まれると凄まじいものだ。特にリリー・フランキー演じるところの安田のイヤラシサ。臆病な人間の奥底に潜む汚い複雑な駆け引きが見え隠れするところが酷く悲しく、憎たらしく悪らつな笑みとともに非常な無気味さを感じる。リリー・フランキーの名演、素晴らしい演技だ。と思いつつもリリー・フランキーという奴は本当にイヤラシイ奴なんだなんて思い込まされてしまうほどの迫真の演技であった。
 太平洋戦争で南方のジャングルにおける人肉食が事実なのかはよくわからないのだが…。しかし、水木しげる氏の戦記を読むと食料不足で極端な栄養失調とマラリアなどの伝染病病に苦しみ多くの日本兵が亡くなった事が書かれている漫画を読んだことを思い出した。そして、大岡昇平の原作小説も読まなくてはならないと思う。
 この映画を観れば本当に戦争がヤバイのは歴然たる事実であることに間違いない。

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