「予測不能…ではなかった」オオカミは嘘をつく REXさんの映画レビュー(感想・評価)
予測不能…ではなかった
イスラエル版タランティーノ…っぽくしたいのかもしれないが、話にはそれほど捻りもなく。
冒頭のスローモーションのかくれんぼ、不穏さを醸し出すかっこいい音楽から傑作の期待を持ったけれど、さにあらず。
登場人物の属性があまりにどストレート。
大体、容疑者、刑事、被害者の父親の三人しか出てこないわけだから、消去法でいくと真犯人は容疑者に決まってしまう。
あるとしたら刑事で、自白を強要して潔白の人間に自分の罪を被せようとしているという線も考えられなくもないけれど、其れを匂わせるような伏線も演出もなし。
容疑者が拷問に耐える様子に、本当に犯人ではないのかな?とチラと思うこともあったが、まあそれだけ。
なぜ容疑者が容疑者とされたのか、なぜ刑事や被害者の父親は犯人だと確信してるのか、その根拠が明示されていないので、ただ単に我慢のしくらべっこに終始してしまっている。誰しもが狼の可能性がある…というような、人間の業を描くこともなく、狼は狼だったのね、で終わりました。
むしろ被害者の父親のサイコパスぶりや常軌を逸した行動がおもしろい。
拷問途中でもケーキの仕上がりを気にしたり、家族からの電話に何事もなく出てしまったり。
更に彼の父親が登場したときは、拷問吏が二人になって(笑)、容疑者には同情を覚えた。
拷問のなかのユーモア、そういった緩急で展開の先が読めない面白さはあるにはあった。音楽の使い方もかっこいい。
イスラエル人によるアラブ人への偏見なども折り込みピリリとした悪意に満ち、クライムサスペンス好きな人を引き込むエッセンスはあるとは思う。
関係ないが、被害者の少女達の頭部も見つけられず、刑事の娘の死体も見つけられず、暴力を振るうしか能のない警察官。世界中こんな奴ばっかりだったら嫌だなぁ。