「ポテンシャルの高い世界観と尻つぼみな魅力」パージ:アナーキー sus303s45cさんの映画レビュー(感想・評価)
ポテンシャルの高い世界観と尻つぼみな魅力
あらゆる犯罪が許容される夜、「パージ」。
その直前の夕暮れにおいて、ある者は穏やかに乗り切るたの防壁を準備し、ある者は復讐を果たすための装備を整える。序盤で描写されるパージが始まるまでの静かな緊張感は、その後に続くであろう最高の盛り上がりを予感させます。特に、フランク・グリロ演じる警察官が自動車を発進させるあたりは初代マッドマックスを想起させられ、期待値は最高潮になります。しかし、ここまででした。
中盤で自動車が停止するとともに、この映画への興味も急速に冷めていきました。警察官は、当初の目的から離れて母子家庭の親子と離婚危機の夫婦を助けることになるのですが、ここからがいけない。貧困層は富裕層の愉悦を満たすための道具であり、国からも除け者にされていることが発覚し、物語は善と悪の単純な二元論へと舵へ取っていきます。善である主人公サイドが、向かってくる悪ー富裕層と国家警察を問答無用に殺害していきます。弱者が強者に立ち向かう姿を表現しているのかもしれないのですけど、エゴイズムにしか感じないのですよね。「復讐では何も解決しないわ」といいながら、いかにもテロリスト風の過激派組織の活動に賛同している娘がこの映画の最たる象徴であるのかもしれません。
登場人物が多い割には偏った立場の目線しか存在せず、もったいないというのが正直な感想です。もしかしたら前作と色を変えるためにあえて、上記のような方向性にしてるのかもしれませんが、残念な印象しか残りませんでした。前作は未鑑賞なのでなんともいえないのですが。
序盤の雰囲気が最高だっただけに、中盤以降においてどこにでもありそうなことを言い始めたのが、ただただ残念でした。