「慈善 と 偽善」哀しみのトリスターナ jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
慈善 と 偽善
ドン・ロペは鷹揚に構え 手持ちの品を売る時も値引き交渉などしない
(世間体はよい)
(教会には行かないが 善行を施している… と考えている)
孤児になったトリスターナを引き取り 養父になる
が、軟禁状態にして〈世間から遮断〉しておき、父親の権威を振りかざしながら
無垢、無知、無防備の娘の混乱に乗じて
関係する
成長するにつれ 彼女の意識は目覚め始め
自由に外出し、画家と恋に落ちる
男性不信もあるのか
芸術家の身勝手さも察知したのか
束縛されるのが嫌なのか
結婚はしない
自分も働くつもりだった
が、病に倒れ、死を覚悟しロペの元に戻ることを選択
どーせ死ぬのだし… と、考えもする
画家のお荷物になることを危惧したのか?
ところが 片足を切断して生還し
いまや〈憎悪の対象〉となったロペと再び暮らすことに!
〈愛〉を知ったばかりに
彼の行為への怒りは更に募る
(画家とは終わる)
遺産が転がり込んで 金持ちになった彼は
慈善活動にも精をだし 司祭たちとも知己になる
彼は傷ついた彼女の面倒を見、善行を重ねていると考えている
(内面の傷は?)
そして 不適切な関係を指摘され、二人は結婚する
ロペや司祭たちの とってつけたような善意と正義
そして 無自覚の悪意と欲望
トリスターナは 彼等がくつろぐ部屋の外を
呪詛の念を唱えるように
松葉杖の音をたてながら往復する
また足が不自由になった後
妙に 馴れ馴れしくなった幼なじみの中に
同じものを見つけた彼女は
ガウンを開き〈裸体と傷〉を深い軽蔑をもって
半笑いで見せてやるのである
そして 激しい雪の夜
苦しむドン・ロペに医者を呼ばず、窓を開け放つのだ
これで呪縛から解放されるのだろうか
司祭とその教義も彼女を救いはしなかった
酷薄な表情のトリスターナと
フィルムを巻き戻して無垢だった頃の彼女の姿を対比させ、因果関係も示唆している
色々考えさせられました
ブニュエルの1970年の文芸もの
原作者のベニート・ペレス・ガルドスは スペインの国民的な作家らしく、ビリディアナも彼の作品を基にしているのね
宗教に懐疑的な話ですが、スペイン人と宗教との関係の深さを感じました