「真実の努力。」ザ・テノール 真実の物語 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
真実の努力。
日本でも数々の番組に取り上げられていたらしいが、
失礼ながらベー・チェチョルという人を全く知らなかった。
歌手が声帯を失うだなんて…何たる悲劇かと思うが、
そういえば御大J・アンドリュースも過去に美声を失う事件
があったっけ。あれは手術の失敗…?だったのか。
今回の最初の手術にしても…声帯と肺の片方の神経切断
という、癌だったのだから仕方ないにしても、非常に運が
悪かったとしか素人には捉えようがない。
映画後半で日本の一色教授による回復手術が施されるが、
その最先端技術も、あくまで声帯を取り戻す(話ができる)
…というのが、これまでの成果だった。
オペラ歌手に戻る(戻れる)というのは夢の夢の話なのか。。
テーマは劇中で本人が何度も口にする「努力」に他ならない
のだろうが、どんなに努力したって得られないものがある。
「オペラ歌手は、なりたくてなれるもんじゃないんですよ」
と冒頭で口にする本人が、神が与えたはずの才能を失う。
大きな壁にぶち当たった時、人間はどうすればいいのか。
結局のところ、ここまできたのが本人の力なのだから、
乗り越えていくのもまた本人であるしかない。という事が
分かるのだが、周囲の励ましや応援、ことさら日本人音楽
プロデューサーの沢田氏の尽力は大したものだ。彼もまた、
決して諦めない強固な意志の持ち主だったことが大きい。
日韓相乗効果ともいうべき努力の末、彼は少しずつ歌声を
取り戻していくのだが…
リリコ・スピントという世界的に類稀な歌声の持ち主である
彼の冒頭の迫力あるオペラは必聴。ここでもう涙が溢れる。
昔J・ロバーツが有名になったあの映画(PW)で、初めてオペラ
を聴いて感泣するシーンを思い出した。歌声の力って偉大だ。
もう少し要らないシーンを詰めて短くできたんじゃないかと
思う箇所が幾つかあったが、主演キャストや日韓俳優の熱演に
「お疲れさまでした~」と言いたくなる努力融結合の感動作品。
(伊勢谷くんは語学堪能だし、北乃きいは歌が上手いのねぇ~)