「安心の“元サヤ”」間奏曲はパリで きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
安心の“元サヤ”
ノルマンディーって田舎なんですねー。
安心の“元サヤ”。
パリが舞台の、先進的で いかにもフランス映画~という舞台設定ではないのです。
以前観たのは「5時から9時の恋人カンケイ」。ああいったフランス人のショッキングな“夫婦公認・婚外愛人契約”ではなくて、本作品は農村を舞台とする、ウェットな後ろめたさ物。
これ、「東芝日曜劇場」みたいに、どこにでもある倦怠期の夫婦のすれ違いと、子育ての悩み。そしてちょっとした“過ち”。
でも元サヤに戻るってストーリーなのでした。
そんな田舎の家庭の物語が、ちょうど良い感じで、日本の我々にも波長が合うのかもしれません。
おそらく本国フランスでも首都ではなく、地方都市の一般家庭や、田舎に両親を持つ若者たちに支持されるタイプの、ノスタルジックな映画なのではないかな?両親のことを想い、自分の今を想い。少し古めで等身大の。
反抗、不足感、そしてちょっとした過ちのエピソードを経て、初老の夫婦はお家に帰ります。
フランス映画もパリを離れて田舎に行けばドラマは糠味噌くさい。逆にこれがとても新鮮で作品を楽しめました。
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うちの母、
運転免許を取ったのが40才を過ぎてから。
免許証をゲットしたその日に彼女は帰って来ませんでした。家出敢行。
一体どこに行ったのやら(笑)
翌日、
「ああ、楽しかった!遠くまで行った。車で寝た。やってみたかったの!」と破顔の笑顔で帰ってきました。
旅は命の充電。
僕らは かつては狩猟の民として大陸から渡ってきた漂泊の民族ですもの。ふと何処かへ足が向いてしまうのは(理由はさておき)、当然といえば当然なのかもしれません。
その僕も下駄履きのままで学校の寮から失踪して、一週間長崎を歩いたことが。
これって母方の血ですかね?
帰ってみたら山狩りもあったようで、自分の捜索願を自分で取り下げに警察に行きました。
「婚約者の方がどんなに心配されたかわかってますか?」とお巡りさん。僕があんまり反省している様子がないのでポリスマン怒ってました。
でもね、夫婦、婚約者の間柄であっても、対話の不満もあれば、対話中断の必要もたまにはあるのですよ。
独りになること、そのために旅に出る必要ってあるのです。
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牛のようなグサヴィエ。
羊のようなイザベル・ユペール。
愚鈍な牛と拠り所を求める羊。
夫婦、妙なるかな。
オルセー美術館でグザヴィエが買ったポストカードは、チャールズ・スプレイグ・ピアースの「羊飼いの少女」です。
オルセー収蔵のミレーやピサロの同名の作品ではなく、遠くアメリカ出身のピアースの現代絵画を持ってくるあたりが、妻ブリジットの心の旅を表現する、隠れた演出です。
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【エンディング、妻の湿疹】
知り合いの牧師さんから聞いた話、
原因不明の湿疹で各地の大学病院を巡っていたティーンの女の子。万策尽き果てていた。ダメ元で近所の小さな皮膚科に紹介したのだと。
お爺さんのお医者さんが話を聞いて
「そうか、そうか、」
「辛かったろう、辛かったろう」と泣きながら赤いぶつぶつの腕をさすってくれたと。
その日を境に湿疹が消えていったのだと。
エンディング、
死海で 付かず離れず、たゆたいながら、泥パックでお互いに触れ合う二人。
どうぞブリジットの湿疹が治りますように。
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