「贖罪」マルティニークからの祈り 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
贖罪
「事実は小説より奇なり」とは言うけれど、韓国の平凡な主婦が巻き込まれた不幸は同情するに余りある。
実話を基に映画化した本作品は、多少演出した部分や、映画的にオーバーに表現した所はあると思うが、麻薬密売で逮捕され、言葉も通じない異国の地に765日間も拘留されたのは事実だ。
自分が麻薬の運び屋をさせられていることも知らずの逮捕劇の背景には、彼女が家族を思ってのことではあったが、やはり冷静に考えれば、「うまい話には裏がある」の言葉通り、危ない橋を渡る浅はかな行動だったと思う。
パリからマルティニークにある刑務所に移送されてから、平凡な主婦ジョンヨン、そして夫ジョンベをはじめとした人々の釈放へ向けての闘いが始まる。
このジョンヨンを演じた、第60回カンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いたチョン・ドヨンの演技が素晴らしくて胸を打つ。
そして彼女の一人娘ヘリン役のカン・ジウの愛らしさが更に涙を溢れさす。
彼女がここまで長期の拘留期間に及んだのは、ひとえに行政側の対応にある。
このところ日本で発生した凶悪事件を見ても、行政側がもう一歩踏み込めば、もっと真摯に対応すれば、こんな大事にはならなかったと思う事も多い。
それにしても本作品に登場する役人たちは余りと言えば余りだと思う。
この長期の拘留劇は、ある決死の行動から解決の糸口をつかんでいく。
この作品を観ると、家族の絆の強さと温かさを感じると共に、人は多くの人々に助けられて生きているのだと改めて感じた。
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