「C'est la vie(しかたないことさ)」小川町セレナーデ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
C'est la vie(しかたないことさ)
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「おかま」に惚れる女の子は「おこげ」と言うらしい。モノクロでシュールな始まり、おこげの話?かと嫌な予感・・、おかまエンジェル(安田顕)とおこげ真奈美(須藤理彩)の間に生まれたのが小夜子(藤本泉)、男運が悪いのは遺伝なのか?「スナック小夜子」の物語。
見どころは化け具合、安田顕さんの芸(ゲイ)域の広さは別格、長じた小夜子が地味顔で目力の強い娘くらいの印象だったのだがステージメークをすると見ごとに化けるし、亮子(小林きなこ)に至っては芸人キャラのアクセント役かと思ったがステージでは嘘かと思うキュートなダンサーに変身、見事に蕾から開花が計算されている。チョイ役クラスも実にナチュラル、子役も上手い。大杉漣さん特別出演シーンもうなずける。
素晴らしいのは役者さんだけでない、微妙な世界のお話、水商売ながら出てくる人々に卑しい人が全くいない、ヒール役も根っからの悪人ではない、それでいて作り物の印象がしない、むしろ健気で前向き、清々しくもある。加えて思わず笑ってしまう小技の数々、これは凄いことだ。映像も往年のフランス映画へのリスペクトさえ感じる陰影深い出来栄え、説明的なセリフもなく画で魅せる上手さ、とても初監督作品とは思えない才能がほとばしる。
もともとセレナーデ(小夜曲)とは恋人や女性を称えるために演奏される楽曲、まさに母に捧げるセレナーデ。まさか親子3代に亘る物語とは、孫娘の行く末がリフレインになりませんようにと祈ってしまいました・・。
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