「生放送!政府の傲慢というテロ」テロ,ライブ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
生放送!政府の傲慢というテロ
ニュースキャスターからラジオ番組に左遷させられたヨンファは、橋に爆弾を仕掛けたと言うリスナーを軽くあしらい、口論に。すると、本当に橋が爆発し…!
生放送中のラジオ番組で電話越しに犯人と交渉。
ほぼラジオ局のスタジオのワン・シチュエーション。
事件勃発から結末まで、リアルタイムで進行。
2つのハラハラドキドキ緊迫サスペンスの設定が見事に融合。
これまた韓国サスペンスの力量に唸らされてしまう。
自分の言い過ぎでとんでもない事件を招いてしまった…。
ヨンファには少なからず崩落寸前の橋に取り残された人々を心配する気持ちはあるが、本心は…
犯人との生放送中の交渉は最高のチャンス。
自分がまた花形キャスターに返り咲く為の。
隠そうとしてもその野心は見え見え。
当初は見下していたのに、コロッと変えた態度があざとい。
犯人の無理な要求にも冷静に対処していたが、耳にイヤホン型の小型爆弾が付けられ、逆に追い詰められていく…。
犯人は“パク・ノギュ”と名乗った。
その昔、橋の建設に長年携わっていたが、事故で仲間が死亡、政府はゴミのように見捨てた。
動機には少なからず同情の余地はある。
要求は、政府の…いや、大統領の直々の謝罪。
無理な要求をし、国民を恐怖に陥れ、犯人はやはり頭の狂った凶悪犯…?
犯人の凶行は確かにテロだ。
でも、自分がレビュー中で犯人を“テロリスト”と呼ばないのは、犯人以上に卑屈で傲慢な奴らが居るからだ。
言うまでもなく、政府。その対応。
大統領の代理としてやって来た警察庁長官。コイツの上から目線の偉そうで挑発的な態度にはマジでムカついた。不謹慎ながら、犯人の「こいつを殺す」の言葉に超共感。
無論、大統領が謝罪に現れる筈がない。政府の意図は…
もし大統領が謝罪したら、国民の関心が犯人に移ってしまう。
犯人をこのままイラつかせ、暴挙を行わせ、橋に取り残された人々が犠牲になれば…。
犯人は国民の敵に。政府は思う存分正義という大義を行える。
皮肉にも犯人の復讐の動機と同じ。国民が政府に見捨てられたまさにその瞬間だ。
ヨンファの過去の疑惑が持ち上げられ、さらに立場が窮地に。
大統領の謝罪を要求し続ける犯人。ひょっとして、近くに…? その正体は…?
政府や視聴率や出世主義の局の思惑。
犯人探しや緊迫の展開の結末は…!
文字通り政府にメディア上で殺されたと言っても過言ではない。
政府の傲慢こそ、我々の身に降りかかるテロリズムだ。