「主人公は、話についていけてません。」新宿スワン 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は、話についていけてません。
「新宿スワン」見ました。
原作未見です。園子温作品に関しましては、「ヒミズ」「紀子の食卓」「冷たい熱帯魚」などは何度も見返すくらい好きです。前作「TOKYO TRIBE」はつまらなすぎて途中で劇場を飛び出しました。今回も、言わば前作に似た感じの雰囲気を感じていたのですが、こちらはそこそこ楽しめて。と言っても、話自体は退屈だけど、綾野剛以外の役者さんの格好良さにかなり引き込まれた。
この映画、歌舞伎町版「クローズZEROⅡ」ですよ。ダサいセリフ連発の口喧嘩&睨み合いと、殴り合い。冒頭で伊勢谷友介が「こいつは俺のダチだ〜」のセリフは笑いそうになりました。2015年現在でダチなんて死語を聞くとは思わなかったです。てかダチってなんすか?でも伊勢谷友介の見た目はかなり仕上がってた。幹部やら社長やらの肩書きを持つ猛者が何人か出てくるけど、豊原功補さんも山田孝之さんも安田顕さんもリンダマンも雰囲気は最高だった。丸高愛実さんも出てましたが、ガッツリ体張ってましたね。
ストーリーは...まぁまぁですかね。現実のスカウト業界も歌舞伎町の裏も知らないから評しがたいが、スカウトの仕事や歌舞伎町の支配関係はすごく丁寧に描かれてる。だからすごく分かりやすいんだけど、主人公が話の中心にいるとは思えなかったですね。話の軸は幹部同士の駆け引きに終始していて、沢尻エリカとデートしてるだけの主人公はそこに居るんだけど、重要な働きをしていない。「女の子に幸せだって言わせます」なんて決意も何処へやら、全く処理されず。でも今作最大のヴィラン・山田孝之と因縁を持たせる設定は大事でしたよね。ここまで悪に徹する山田孝之は珍しいけど、メンチ一発で大物感を出せる辺りはさすが名優。この大物悪役と主人公が最後に一騎打ちをして話を纏めた無理矢理感は少し感じるが、漫画の実写化映画の中では上々の仕上げだと思います。
総じて、男を見るなら最高の作品。同じ群像劇なら「闇金ウシジマくんpart2」には若干及ばず。ストーリーが微妙な割りに退屈だと思わなかったので、かなり評価に困る作品だなと感じました。園子温作品が好きな人にはオススメできません。