「お栄といえば……」百日紅 Miss HOKUSAI CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
お栄といえば……
葛飾北斎の娘、お栄を主人公にし幕末にさしかかる江戸を描いた杉浦日向子の原作漫画をアニメ映画化したもの。
短編連作の同作品を、主人公の成長物語として仕上げているのは、なかなかよかった。主人公のお栄といえば、1981年に新藤兼人監督が撮った「北斎漫画」で田中裕子が演じていたのを思い出すが、改めて考えると、杉浦日向子も同じ頃にお栄を描いていた事になり、やはりどちらの作品でも、男勝りの勝気な性格ながら、ふと魅力を感じさせる女性である。今回のアニメ化でも、そこは上手く描けている。
ただ一つ気になったのは、原恵一監督は緩急の付け方が今ひとつなのかもしれない。主人公が目の見えない妹に語りかけながら、まるで浮世絵の世界のように周囲の情景を表現するシーンなどは、せっかくのアニメと浮世絵の融合なのだから、もう少しゆっくり描いてほしいと感じ、その一方で、江戸のゆっくりとした時間が流れるはずの日常の暮らしの描写では、何となくもっさりとしてテンポが悪い。まぁ、同監督の他作品をそんな視点で意識した事はなかったのだが、少なくとも本作では緩急が今ひとつと感じた。
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