「あるモキュメンタリーの不可解な記録」ある優しき殺人者の記録 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あるモキュメンタリーの不可解な記録
ホラーの鬼才、白石晃士監督による日韓合作のスリラー。
白石監督作と言えばモキュメンタリー形式の作品で有名だが、本作もその手法。
障害者施設を脱走し、18人を殺した容疑で指名手配の殺人犯。
彼の幼馴染みのジャーナリストが独占取材を持ちかけられ、廃屋の一室に呼び出される…。
モキュメンタリーとしてはなかなか面白そうな設定。
何故彼は凶悪な犯行に至ったのか…?
彼の人間性と事件の真相に迫る…。
…という話ではなかった!
訳の分からん事を言い出す。
実際殺した人数は25人。
これから首に痣のある日本人二人を殺すという。
27歳の時に27人殺せば、幼い頃に事故で死んだ幼馴染みと彼が殺した人々を生き返らせる事が出来る…という神様の声を聞いたという。
その予言を信じ、これから起こる奇跡をカメラに撮れという…。
大量殺人鬼にして、相当の精神異常者。
しかし予言通り、二人の日本人がこの部屋に現れ…。
殺人犯もアブナイ奴だが、現れた日本人二人もアブナイカップル。変態的な性癖があり、男の方は凶暴な性格。
罵り、挑発し、威嚇し、隙を見て取っ組み合い、ナイフで切り合い、形成が幾度も逆転し…。
ワン・シチュエーションを飽きさせない為に展開を凝らすが、起きてるのは罵倒とグロ。
話に面白味は無く、狂気の行方と顛末をただ眺めているだけ。
“この結末は誰にも予測出来ない”とのキャッチコピーだが、そりゃあ予測出来る筈ない。
だって、突然まさかの現実離れと言うかファンタジーと言うかなんだもの。
このオチで、タイトルの“優しき殺人者の記録”の意味が分かるとは言え、う~ん…。
モキュメンタリー・サスペンスを作りたかったのか、それを入り口にびっくり仰天の怪作を作りたかったのか、それともラストの唐突の感動を見せたかったのか…。
いずれにせよ意図がよく分からなかった。