「コンピュータの電源が何か気になる」ガラスの花と壊す世界 lingrenさんの映画レビュー(感想・評価)
コンピュータの電源が何か気になる
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コンピュータプログラムが主人公の電脳世界の話だが、絵柄、声、挿入歌などは完全に萌え系。アクションシーンも含めてまどマギ感はかなり強いが、アニメーションの動きはいまいちで、アニメの動きを見に行くと物足りなく感じるだろう。
話の展開は早いので、確かに60分ちょっとは尺として短いかもしれないが、逆にこれ以上長くされても恐らく中弛むと思われ、適当な時間ではないだろうか。作品のストーリーテリングがあまり上手くない感じなので、事前にある程度ネタバレ級の予備知識があっても、むしろ視聴にはプラスかもしれない。
物語そのものは、可もなく不可もなくといった印象だが、絵柄が可愛いのでその分得をした気にはなる。
ただ個人的に印象深かったのは、そこそこネタバレにはなるが、この物語には一切人間がいないというところである。厳密には登場するシーンはあるのだが、作品での現在の時間軸では完全にコンピュータプログラムしか存在していない。
人間の持つ愚かさや曖昧さ、傲慢さなどを自己批判する形で、人類の衰退、文明や肉体の喪失、あるいは死滅を描く作品には、まだ人間が話の中心にいるが、そもそも人間が「最初からずっといないし、今後もいない」という人間の圧倒的な不在感に、何となく今っぽさを感じたのでした。
まあ確かに、人間の残した文明が完全にデータとして保管され、人格を完全に再現できるプログラムがあり、現実世界を完璧にエミュレートできるマシン環境があるなら、人間の肉体的な価値、物質的な現実社会の価値って何なんだ?不便で不確定で不快なだけじゃん!とも思うので、そういう意味では本作の世界は正しい未来の世界の形でもあるのかなあ。
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