「汚れた金が死体を築く」サボタージュ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
汚れた金が死体を築く
『エンド・オブ・ウォッチ』で注目された
デヴィッド・エアー監督の最新作は、
アガサ・クリスティの『そして誰もいなく
なった』を原作にしたサスペンスアクションスリラー。
……いちおう公式情報らしいので書いたけど……
『そして誰もいなくなった』が原作って……え、どのへんが?(笑)
まあそんなのは往々にしてあることと割り切って見るべし。
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まずは今までよりぐっとダークな役のシュワちゃんを
皮切りに、以外と豪華なキャスト(O・ウィリアムズ、
S・ワーシントンなどなど )が今までのイメージとは
かなり異なる役を演っている所が面白い。
特にこんな鬱々した雰囲気のシュワちゃんは初めてかも。
どこまで信用して良いのか分からない危うさ満点。
あとミレーユ・イーノス。「名前は聞き覚えがあるけど
誰でしたっけ」と調べてみたら、『ワールドウォーZ』で
ブラピの良き奥様を演じてた方だったのね。
別人じゃん。どっちかと言ったらもうゾンビ寄りじゃん。
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アクションに関しても、比較的小規模な作品としては
かなり出来の良い部類に入るのではと思う。
仁王立ちで機関銃をバリバリ撃ちまくりながら
敵を一掃する往年のシュワちゃん映画とは異なり、
一瞬も気の抜けないピリピリした雰囲気が漂っている。
冒頭や中盤の突入シーンなどはチームプレーの面白さや
みなぎる緊迫感が伝わる良い出来だし、クライマックスの
カーチェイス&ガンファイトもなかなかだ。
あ、ただし残酷表現はかなりキツめなので、
血が苦手な方は要注意。なんか色々と飛び散ったりしますよ。
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サスペンスの引っ張り方も○。
列車でトレーラーごと破壊する豪快な殺害方法に始まり、
屈強な男たちが奇怪な死に方を遂げていく展開に
「いったい誰が? どうしてこんな残酷な方法を?」
と期待が高まる。
シュワちゃん演じる主人公ブリーチャーの凄惨な過去や
メキシコの犯罪組織を利用したミスリード(まあ真犯人
じゃないよねとは薄々感じつつ)など、
一筋縄ではいかない事件であることを匂わせる
要素も散りばめられ、犯人が判明する終盤までは
グイグイ引き込まれながら観ていた。
そう、犯人が判明する終盤までは――。
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真相が分かってからの終盤15分がどうにも残念な展開。
ええ~、これだけ引っ張ってそんな単純な筋書きだったの?と。
犯人につながる伏線らしい伏線も実は無かった訳で、
あんなの誰が犯人でも成り立つぢゃないのさ。
天井に磔!とかミステリアスな殺し方にした理由
とかも特に説明無いし……。
シュワちゃんが隠し持っていた1000万ドルの使い道も、
メキシコ警察に口を割らせる為の賄賂ってのはどうも……。
あんなに机の上にバシバシ札束積まなくても……。
いやまあ、武器調達とかパスポート偽造とか
他にも色々使ってたんだろうけどさ……。
期待が高まってただけにかなり拍子抜け。
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まあそれでも、急に別映画みたいになるラスト
に対してはそこまで否定的に思わなかった。
復讐を果たそうと必死になった結果、巻き込むつもりの
無かった仲間たちがバタバタと死んでいく。
最後のアクションも、クラシックでこじんまりとした
雰囲気も手伝い、リベンジの爽快感は薄い。
(おまけに主人公もあのまま死んじゃったんだろう)
数多のアクション映画で悪党に制裁を加えてきた
シュワちゃん自身を否定するような結末。
勘繰り過ぎかもしれないけど、この映画で作り手は
『復讐に綺麗なものなど無い』とでも言いたいのかねえ。
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という訳で、火サス並の強度しかないミステリ要素には
大いに不満があるものの、上映時間中はしっかり楽しめました。
まあまあの3.0判定で。
それにしても最近のシュワちゃん、昔の自分のキャラを
否定したり茶化したりするような役が多いっすねえ。
新作『ターミネーター:ジェニシス』でも
老シュワが若シュワを倒すシーンがあるみたいだし。
まあそれはそれでどんな映画になるか楽しみなんだけど。
<2014.11.07鑑賞>
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余談:
“火サス並の強度しかないサスペンス”という所で
最初はこんなレビュータイトルにしようかと本気で考えてました。
『特殊部隊長ブリーチャー 血けむり殺人事件
~砂漠に消えた1000万ドル! メキシコの
忌まわしい過去がもたらす死の連鎖は葉巻の香り~』
魔が差したんです。無駄に長いしすっげえつまらなさそう(笑)。