劇場公開日 2015年11月13日

「自我が生まれ死ぬまで」ハーモニー フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

自我が生まれ死ぬまで

2017年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

捜査官の主人公が事件の解決と落とし前をつける話

虐殺器官を鑑賞後勢い余って見ることに。

劇場とTVの差、作画の差などで大分げんなりしてしまったものの、話自体は面白かった。
アクションより事件捜査と回想に重きを置いた展開なので退屈と感じる人もいるかも知れない。

同じ世界の後日譚だが本作は平和の約束された日常、自我がどんどん削られて争いの無い世界。ちょっと過剰すぎる気がするがこれが世界平和の一つの形なのかも知れない。

世界のシステムを逆手に取った犯人のテロ、同一作者なだけに展開が似ている気がするが、主人公達は女性なのでそれならではの心の動き、感情がいい差別化になっていた。

親友のいかにも拗らせた様な性格も話が進むにつれて理由付けされていくし、最後の展開なども綺麗な決着だった。
ただ、世界観と緊張感があまり感じられず、大多数の人類が終末のを迎えであろう大規模な話な割りに、身内だけでなんだかこじんまりしてしまった感がいなめない。
犯人の動機は捻りがあったのだが自分としては納得があまりできなかった。いや理解が足りていなかったのかも知れないのだが・・・

自分の理想郷に人類を連れていこうとした訳だが、そこには友情も愛もない世界、主人公の事が気に入っていた様だがそんな感情も生まれなくなってしまう世界に行く意味はあるのか?
合理的に考えているのか感情的なのかよくわからなかったが、それでも決着をつける最後は切なく思えたし、綺麗な悲劇だと感じた。

原作を読めば理解が深まるだろうが、映画として一つの作品なのだから単体で納得させられる作りであってほしかった。

劇中セリフより

「理想を求めるか心理を求めるか」

どちらも欲しいが純度が高い物ほど一つしか手に入らない。

理想も心理も突き詰めると人間は人間でいられなくなるのではないだろうか。目指すのは勝手だが目指さないのも勝手なはずだ。自分の判断を押し付けてしまわないようにしたいものです。

フリント