「レビューをし、言葉にすることで映画は完成する」虐殺器官 mifaさんの映画レビュー(感想・評価)
レビューをし、言葉にすることで映画は完成する
屍者の帝国、ハーモニー、そして虐殺器官。
全て原作を読み、コミカライズも読み、映画館で鑑賞してきました。
前二作に関しては、改変した事実よりも、それによって物語の魅力やメッセージ性が失われたように感じ、百点を付けられはしませんでした。
本作もまた、原作からの改変、というよりカットされた部分があります。
それは僕が原作を読んだとき、最も重要なシーンと思っていたし、アニメでどう表現されるか楽しみにしていたところでした。
それが無いと気づいたとき、かなり不安になりました。
が、結果として115分の上映が終わったとき、その改変について何の違和感も抱いていませんでした。
非常に合理的で、流れを断ち切らない良い変更だったと思います。
「言葉によって人間の行動を操作する」という事、それはつまり歴史の操作にも繋がるわけで、クラヴィスの言うとおり
「人間は言葉によって規定されたりしない」とはじめは思う。
しかしジョンの滑らかな語り口を聞いている内、その魔力に飲まれそうになる。
セリフ量が膨大ですが、今回はそれも気にならないくらい作画が素晴らしい。
ハーモニーではトゥーン調のCGが3割ほど使われており、「出来るだけ手書きとの差異をなくそうとした」と答えてらっしゃいましたが、ひと目見れば分かります。
何より、ラストの背景以外、際立って綺麗な作画が少なかったように思える。
屍者は全体的な作画は凄まじいが、物語の構成が窮屈だった為に、うまく入り込めなかった。
虐殺器官はそのバランスが絶妙で、常に高い作画を維持し、CGの必要なシーンでは遠慮なくCGっぽさを見せつけ、またそのクオリティもかなりのものだった。
紆余曲折あったものの、その甲斐あってかシリーズでもダントツの完成度だったと僕は断言します。
しかし、この映画の最大の面白さは、見終えたあとに色々な人に伝えたくなるのに、うまく言葉に出来ない点にあります。
面白かったとか、凄かったとか、それ以上の言葉が中々出てこない。
だからこそ、レビューやSNSによって、出来るだけ言葉にしようとすべきです。
この物語は、言葉によって始まり、言葉によって紡がれ、そして言葉により幕を閉じる。
僕らもまた、言葉を用いる事でこの魅力を語り継ぎ、「見たいものだけを見る」世界にそれを投じなくてはならない。
そうして初めて、僕達はこの映画を見終えた、と言えるのではないでしょうか。
最後に、スタッフロールにてマングローブの出来事についてのメッセージを入れていただき、ありがとうございます。
思わずウルッとしました。
僕達の方こそ、感謝しております。
出来上がって良かった。見られて良かった。
Projectは終わらない、との事ですが、果たしてこの先には何があるのでしょうか。
Projectの目撃者として、最後までついていきます。
伊藤計劃氏が、僕達へ向けて「提示」した虐殺の未来。
それを「預言」として受け入れるのか、「宣言」として抗うのか。
「預言」に思えてしまう程なのか、つまり物語としての威力がいか程かは、是非スクリーンで目撃して欲しい。