「知らないって素晴らしい」センコロール コネクト いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
知らないって素晴らしい
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今作を知ったのは、新宿バルト9での喫煙スペース内モニターに映るトレーラー。運命的といっては大袈裟だが、かなりの衝撃をもって心に刻まれてしまった。その後、鑑賞後にもう一回そのトレーラーを観たくて足を運んだほどである。
10年前は殆ど映画など観ていないし、ましてや今作のような短編アニメ作品など知る由もないレベルであったので、こうして発見できたことは幸せだったのだと改めて思う。それはトレーラーの短い映像一つ取ってもビシビシ伝わるクールなイメージが、そのまま印象通りに本編で表現されていたことからも窺える。これを10年前に一人の人間が制作していたことに驚愕するのだが、アニメーションの表現が現在でも全く色褪せることなく(色彩設計は、センコロール2の方が当然のようにビビッドではある)驚くほど緻密に描かれていて、アニメ表現の高次元さを体験してしまった。無駄なカットは一切無く、つまらない冗長さや、心象カットなどもそぎ落とし、それは一切雑味を取り除いたクリアなシーンの連続なのである。人によっては無味乾燥さに感じるかも知れないが、何の蟠りも抱かせず、只気持ち良いスムースな動作と、それによるストーリー展開の奥深さが相俟って相乗効果を産み出す、これこそ作家性以外の何ものでもない唯一無二なオリジナリティをぶつけられてくる。登場人物達にも余計な背景を負わせず、クールさに徹する姿勢もスタイリッシュである。小出しに出てくる細かい謎の解答法も、くどくどエクスキューズしないから中毒性が加速する。
端正の良い眉目秀麗さは、この作品の表現として適切だと信じている。諸手を挙げて賛辞を贈りたい内容であった。
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