「単眼の殺し屋と、名バディ誕生」LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
単眼の殺し屋と、名バディ誕生
TVSPの『ルパン三世』はコミカルさが強調されたどの世代も楽しめるエンターテイメント。コナンとのコラボやCG版はより若者受け狙いだが。
元々の原作コミックは、ハードボイルドタッチの大人向け。そのムード纏ってるのが、TVアニメ第1シリーズと原作者モンキー・パンチが自ら監督した劇場版『DEAD OR ALIVE』。
そして本作も。
『ルパン三世』スピンオフTVアニメとして2012年に放送された『LUPIN the third 峰不二子という女』。
それに続く第2弾で、スピンオフ劇場版第1作目。
このシリーズはルパン以外のキャラに焦点を当て、本作のメインとなるのは、ルパンの相棒、次元!
物語はルパンと次元がとある国のお宝を狙う一見いつも通りの始まりだが、ちょい違和感。二人の関係がドライ。
このシリーズは第1シリーズの前後の設定らしく、ルパンと次元もコンビを組んだばかり。
いつもなら絶妙な掛け合いの所を、皮肉を言い合ったり、時々フルネームで呼び合ったり、距離感あり。
“仲間”ではなく、単なるビジネス・パートナー。
分断されている国、東ドロアと西ドロア。
東ドロアに持ち込まれたお宝を狙う為、東ドロアに入ったルパンと次元。
今、東ドロアと西ドロアは一触即発。東ドロアの歌姫が両国の和平を願って西ドロアで開催したコンサート中に何者かに殺された。
その歌姫から直々にボディガードを依頼されていた次元だったが、守りきれず、目の前で…。
犯人の目星は付いている。凄腕の殺し屋、ヤエル奥崎。狙われたら命は無い。
ヤエル奥崎の次なるターゲットは、次元。
歌姫を守れなかった復讐と、一人の漢(ガンマン)として、戦いに挑むが…、
次元はヤエル奥崎に撃たれてしまう。さらにルパンまでも…!
ルパンと次元を窮地に陥れるヤエル奥崎。
ターゲットの墓を事前に建て、弾数は振ったサイコロの目で決める。
片目で、いつも同じスーツ。
風貌も独特で、ヘンなこだわりの持ち主。
が、狙撃の腕は超一流。ルパンと次元も一度は敗北するほど。
一対一の早撃ちで、まさかまさか!次元を負かす。
いやそれどころか、次元を射殺…?!
ルパンと次元の敵として、インパクト含め申し分ナシ!
百発百中の殺しのヤエル奥崎には、あるからくりが。
ヒントは、東ドロアの完璧な防犯システム。
それを逆手に取って、一か八か反撃に出るルパン。
弾丸が貫いた。ルパンの身体をではなく、ヤエル奥崎の身体を。
撃ったのは、次元。ルパンとの作戦で、射殺は偽装。
この一瞬、この一発、このただ唯一の隙を狙っていたのだ。
再び、次元とヤエル奥崎の一対一の早撃ち決戦。
勝者は…、言うまでもなかろう。
が、命までは奪わなかった。何故なら、
腕を撃たれ、もう銃も持てない。
丸腰の相手は殺さない。その代わり、
ガンマンとしての奴は死んだ。
単なる“ガンマン決斗”だけかと思いきや、
ある秘密クラブに囚われた不二子。そこで変態見世物ショーに晒される。
乳首丸出しの全裸で、お子様見ちゃダメのアダルティー。
不二子が狙っていたのは、クラブのオーナーが保持するある機密ファイル。
実はそのファイルこそ、全ての元凶。
歌姫が狙われた理由。次元が狙われた理由。
ヤエル奥崎のターゲットもこのファイルから。
雇い主…いや、“国”。
国家レベルの陰謀サスペンスでもあった。
強敵を倒し、
国の陰謀を暴き、
ヒーローのような活躍だが、間違っちゃいけねぇ。俺たちは一介の泥棒。知ったこっちゃねぇ。
一仕事を終え、煙草を吸い合い、笑い合う。
こうして二人は欠けがえのない“バディ”になっていったんだなぁ、と。
ここに、誕生。
二人が吸った煙草が格別の味なら、本作も格別な大人の味わいの『ルパン三世』!
ラスト、不敵な笑みを浮かべる老人。ファンなら誰もが知ってるキャラ登場というオマケ付き!
東ドロアと西ドロアのモデルは、東ドイツと西ドイツなのは明白。
事情や描かれ方は違うが、タイムリーなものを感じてしまった。
元々一つだった祖国の為に歌った歌姫。
彼女を殺したのは…。
今、現実世界でこんな悲劇が起こらぬ事を。