「死して尚、働く喜劇の王チャップリンは偉大です!」チャップリンからの贈りもの Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
死して尚、働く喜劇の王チャップリンは偉大です!
私が高校生だった今から30数年前、チャップリンが亡くなり、追悼リバイバル上映が有り、東京の映画館へ映画を観に行った記憶がある。そしてそれから数カ月するといくら喜劇の王様チャップリンとは言え、まさか、冗談ではなく本当に遺体が盗まれたと言うニュースは、当時よく騒がれたので今も記憶している。
そして、その誘拐犯の目的は何だったのかとても興味が有った。
いくら死体とは言え、犯罪には変わりがないが、盗みをした犯人達の目的が何だったのかを今回映画を通して観るとチャップリンの遺族、及び貧しい犯人家族には申し訳ないが、思わず笑わずにはいられない気持ちになるのだった。
「人生とはクローズアップすると悲劇だが、ロングで観ると喜劇で有る」とチャップリンが生前残していた言葉そのままを地で生きた犯人像であった!
昔から、貧すれば鈍すとは言うものの犯人にしてみれば、万策尽きた破れかぶれの大勝負のこの事件もきっと名案と自信を持って実行した犯罪なのだろう。本作を観客の立場で観る限り、これは完全なるギャグ事件になってしまうのに!
チャップリンは笑いで多くの人々を救い、死後も尚人々を救う事になるとは凄い!
ラストシーンで、スイスに有るチャップリン邸宅の裏庭の桜の木の枝が見事な風格を見せていた。それはまるでチャップリンがいつの時代も変わる事なく揺るぎの無い信念で、庶民の心を理解し、映画を通して大衆の人々へ「人間の愛の本質」を伝えていた彼の、彼の魂の象徴のようでもあった。アメリカを追われて、晩年をスイスの自宅で静寂の世界で暮らすチャップリンからのメッセージの様であった。チャップリンの秘書は日本人であった事から、大の日本びいきであったチャップリンが日本を愛し、桜を愛でる気持ちも日本人映画ファンとして凄く嬉しいものだ。