「名作の手垢がベットリ」ザ・マシーン Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
名作の手垢がベットリ
SF映画の金字塔「ブレードランナー」。本作を観ずしてSFを語るなかれな名作中の名作。本作はその作品に最も近づいたと言われているのだが、マシーンが意識=心を持ち、この世に生を授かった際の「選択」がテーマとしては確かに似ている。だが、本作のストーリーは、ありきたりな未来のロボットSFそのものであり、ディストピアともとれる世界観設定の王道路線だ。メッセージ性はあるにはあるが、主に研究施設で起こった出来事を静かに描いており、壮大さ等は皆無に等しいだろう。施設内でのこじんまりした物語ならば徹底的にサスペンスやスリラーといった箇所を強化する事も出来るだろうが、いかんせんストーリー事態は想像の範疇を超えてくる事はなく、アクションでもドラマでも無く、スリラー、サスペンスに転じる事も無い、ありきたりな作品だと言う事である。
マシーンこと「エヴァ」は次第に主人公に想いを寄せるのだが、その感情を押し付ける事無く、娘の病に苦しむ主人公をいたわりながらボソッと「愛しているから」と呟く。このシーンはかなりグッときた。だが、マシーンがこの様な意識を持つことはやはり人類の破滅への第1歩になりかねないものだろう。時折怖く見えるエヴァの姿がそれを物語っていた。
女性型のアンドロイドが殻を破って~という展開であれば、「エクス・マキナ」も思い浮かぶが、クオリティは「エクス・マキナ」の方が圧倒的に上だ。予算の影響もあるだろうが、あちらは徹底して怖かった為、軍配が上がる。それでも忘れてはいけないのが本作はイギリス映画だという事だ。ハリウッド産の作品ともやや視点が違う、おおよそ万人からの支持は薄いがマニアから親しまれる様な「隠れた名作」感が漂っている。もしかすると本作も今から何十年位かしたら、過去の名作として扱われる日が来るかもしれない。