「ドキュメンタリー映画として見たかった」バンクーバーの朝日 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリー映画として見たかった
この映画が史実に基づくものであることは分かった。当時カナダに渡った日本人の暮らしがどんなに大変だったのかも分かった。それ故に野球というスポーツが如何に彼らにとって心の拠り所になっていたのかも分かった。しかし、その情報を伝えたかったのであればドキュメンタリー映画にするべきではなかったのだろうか。
史実に脚色を加え、役者を使い、物語として描くのであればリアリズムの追求を欠くことは許されない。しかし、この作品にはそれがない。とりわけ、肝になる野球のシーンの泥臭さのなさには失望の色を隠せない。
面白くなる要素も多々あったはずだ。体格的に見ても力では打ち崩せないカナダ人チーム相手にどのように勝機を見出していくか?このことは物語の軸となり、盛り上がりへと繋がっていくはずなのに、その方法はあまりにも淡白且つ無感情に描かれてしまっている。力で劣るなら、頭脳で、スピードで勝負をかける。そういった苦労や努力が微塵も感じられないのだ。
野球の経験があろうとなかろうと、映画を見ている間我々は観客なのだ。つまりは野球中継をラジオで聞き、勝った負けたと一喜一憂している当時の日本人の気持ちと一体化してこそ琴線に触れていくのである。しかし、この作品は観客をチームのファンにしてくれなかった。このチームを応援したいという気持ちにはとてもなれないのだ。野球経験のある俳優陣を集めた他、日本人街に住む人々の顔ぶれも豪華であればあるほど、もったいない作品に仕上がったことを残念に思ってしまう。
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