それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い : インタビュー

2014年7月2日更新
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井上真央「アンパンマン」声優挑戦で受け継いだ、やなせたかしさんの遺志

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女優の井上真央が、故やなせたかしさん原作の人気アニメ劇場版シリーズ第26作「それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い」で、アニメ作品の声優に初挑戦している。幼少の頃からアンパンマンが大好きだったという井上が声を担当したのは、新キャラクター“りんごぼうや”。憧れの存在だったやなせさんとの対面を果たすことがかなわなかった井上だが、作品を通して故人の遺志に触れ、思いを新たにした。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)

今作は、やなせさんが手がけた最後の原案作。東日本大震災発生後に復興三部作として取り組み、2012年の「それいけ!アンパンマン よみがえれバナナ島」が復興、13年の「それいけ!アンパンマン とばせ!希望のハンカチ」が希望、そして今作が望郷と故郷の再建をテーマに掲げている。

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井上が演じた“りんごぼうや”は、空に浮かぶ美しい島「アップルランド」に住む、格好いいヒーローに憧れる元気いっぱいの男の子。大切なふるさとを守るために、“魔法の種”を探して奮闘するという役どころだ。これまでアニメの声優経験がなかったことが意外にも思えるが、「声のお仕事はしたいなと思っていましたが、声優に関しては自分にとってハードルが高い感じがあったので、そうそう簡単にお引き受けできないなという気持ちがあったんです。ただ、いつの日か声優のお仕事を経験してみたいなと思っていたのと、今回のこのお話には、ご縁を感じたのでやらせて頂きました」と明かす。

縁というのは、今年1月に放送されたNHKスペシャル「みんなの夢まもるため~やなせたかし“アンパンマン人生”」でナレーションを務めたことにある。“りんごぼうや”の前向きなイメージとも合致するため、製作サイドからオファーを受けた。「アンパンマンの声優の皆さんは長年務めていらっしゃるベテランの方ばかり。私は初挑戦で男の子役だったので難しいという思いはありました。ただ、脚本を初めて読んだとき、良い作品だなあって純粋に感じたんです。やなせ先生は旅立たれましたが、残されたメッセージを受け継いでいかなければと思ったときに、自分がこうして関われることが嬉しかったです」。

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当初抱いていた不安は一掃され、劇中では井上が声を務めていることを忘れてしまうほどに、伸びやかで元気いっぱいの“りんごぼうや”になりきった。実写作品で女優として演技をするときと大きく異なったのは、「とにかくおなかに力を入れる…ということでしょうか」と振り返る。さらに、「皆さんが張りのある、聞き取りやすい言葉を入れているなかで、私だけが普通のトーンでいって悪目立ちしないように気をつけました。トーンだったり、語尾だったり、息遣いももちろんですが、基本的に聞き取りやすさを意識するなかで、おなかに力を入れた方が声は作りやすかったです」と笑みを浮かべる。

アンパンマンといえば、あらゆるシーンにちりばめられている含蓄あるセリフが、子どもだけでなく大人の心の琴線にも触れることがしばしばある。今作でいえば、アンパンマンの立ち向かう姿勢を目の当たりにした“りんごぼうや”が、「格好悪くたって、泥だらけだって、誰かを助けるために頑張るのが本当のヒーローなんだ」と学んでいくくだりに象徴される。デビューしてから既に20年以上が経過した井上にとって、今も忘れることのできないセリフはどんなものなのだろうか。

「朝ドラで主演させていただいた『おひさま』は素敵なセリフが多かったですね。『女性は太陽だからね』というものもありましたし。なかでも、『忘れずに幸せになりたいよね』というセリフがすごく好きでした。あの当時は戦争がありましたし、終戦を迎えても自分たちが幸せになっちゃいけないんじゃないかという思いもあったのでしょうね。放送が東日本大震災の時期と重なっていましたし、『決して忘れてはいけないけれど、でも幸せになることも忘れてはいけない。だから、忘れずに幸せになりたいね』という意味が込められたこのセリフが強く印象に残っています」

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やなせさんの熱い思いに触れ、8月には2015(平成27)年放送の大河ドラマ「花燃ゆ」がクランクインする。主演の井上は、幕末の思想家である吉田松陰の妹・文(ふみ)に扮する。物語は、文(のちの美和子)が久坂玄瑞(東出昌大)の妻となり、激動の渦にある長州藩の運命に翻ろうされながら、新たな時代へと、松蔭の志を引き継いでいく姿を描く。撮入まで約2カ月、井上はいま何を思うのか。

「朝ドラで10カ月間にわたり同じ役を演じさせていただきましたが、さらに長い期間、ひとりの人物を演じることについて『どうなるんだろう』という期待と不安が入り混じっています。座長として自分が引っ張っていく自信は全くありませんが、本当に大勢の方々がかかわる作品になるので、頑張るのはもちろんのこと、現場でどれだけぶれずに立っていられるか。それが、これからの長い長い1年で、私にとっての勝負なのかなという気がしています」

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