劇場公開日 2016年3月25日

  • 予告編を見る

「歴代最高に格好いいバットマン!!」バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 temujinさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0歴代最高に格好いいバットマン!!

2016年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

萌える

今やハリウッドを完全支配するまでに拡大したMCUに対抗すべく、DCが全身全霊を賭けて放った話題作。
とどのつまり『DCコミックス・シネマティック・ユニバース』構築に向けての第一歩であり、
「ウォッチメン」「マン・オブ・スティール」と、DC映画を監督してきたザック・スナイダーが引き続きメガホンをとった。

「マン・オブ・スティール」に続く作品として、後に控える「スーサイド・スクワッド」や「ジャスティス・リーグ」への
言ってしまえば「繋ぎ」、ジョイントのような立ち位置にある作品なのだが、
何事にもジョイントは大切なものなので、ワーナーも必死にプロモーションを展開している。
入場者特典でクリアファイルを配ったりと、打倒MCUへの熱量は凄まじい。

個人的に、MCUは好きじゃない。 理由は色々あるが、 何といってもあのド派手な子供だましのラスト。
アレは頂けない。 エンドロール後のオマケ映像も、お得感は有るが、映画としての潔さ・美しさに欠ける。
ちなみに本作に、そういった類の映像は無い。

そんな自分は、DCUの開幕、まさに「ジャスティスの誕生」を告げる本作には、最高の賛辞を送りたいと思う。

まず、レックス・ルーサーを演じるジェシー・アイゼンバーグの怪演に注目したい。

これまでのルーサー像とは打って変わった、今までにない斬新なキャラクターには戸惑いもあるだろうが、
これからMCUの対抗馬として成長していくDCUの、少々ポップな世界観におけるスパイスのように捉えれば、すんなり受け入れられる。
ザック・スナイダーも恐らくそれを狙って起用したのだと思うし、その狙いはしっかりハマっていると思う。
それに、ラストではなかなかの豹変ぶりも披露していて、今後の活躍の仕方も気になるキャラクターに仕上がっていた。

しかし何といっても、この映画における一番の功績は、歴代最高と言ってもいい「バットマン」というヒーロー像の完成度。

ブルースを演じたベン・アフレックは勿論のこと、ザック・スナイダーは本ッ当によくやってくれた。
彼のセンスは、最大級の賞賛に値する。
ティム・バートンのコミカル路線でもない、ノーランのスタイリッシュ路線でもない。
まさに「アメコミから飛び出してきたような」、ずんぐりむっくりで、ガチムチなバットマン。

劇場公開前に公開された様々な画像や予告編を見ていた時から、今作のバットマンには幾度となく萌えてきたのだが、
やはり本編で躍動するホンモノは違った。
スーツの「布感」といい、隆々の筋肉といい、良い具合の変声器といい……バットマンというヒーローの魅力を最大限引き出すことに成功している。

スーパーマン、ワンダーウーマンに挟まれて、正直ポンコツな立ち位置になってるのも良い。
DCUにおいてのバットマンの立ち位置は、リーダーシップのある、ただの一般人という点からも、
まさにMCUにおけるキャップのそれに近いだろう。

執事のアルフレッドは、「ダークナイト」のような気品のある老紳士というイメージでは無くなってしまっているが、
(「ダークナイト」におけるフォックスとアルフレッドをハイブリッドにした感じかな……)
オタッキーな雰囲気は新たなバットマン像に上手く噛みあっていて好印象だった。

そしてMCUと対照的な、作品全体に漂う陰鬱で、ジメジメとした空気感が良い。

バットマンとスーパーマンのいがみ合い、スーパーマンを畏れる社会、
そして実際にスーパーマンに向けて攻撃的なテロリズムに打って出ようとする者たち……。
「ウォッチメン」でザック・スナイダーがやったような事が、再び洗練されて再生されているような感覚。

何よりも素晴らしいのは、意外すぎる衝撃のラストシーン。
これをやってのけたザック・スナイダーは、本当に凄い。格好いい。
近い将来、必ずやDCUが、MCUと肩を並べるか、追い抜く時が来るだろう。
その時、DCの重役たちはザック・スナイダーという男が残した功績の真の価値を悟るに違いない。
それだけカッコいいことを、彼はこの映画で達成した。

本作における陰鬱感は、ノーランの「ダークナイト」ともまた違った、厭な空気感なのだ。
もっと人間臭くて、泥臭くて、汗臭い。 まさに臭い要素が三拍子そろってる。 それって素晴らしいって思いません?

ベン・アフレックの監督・主演・脚本(?)で制作されるというバットマン単独映画も、楽しみでしかなくなった。
果たして、ベン・アフレックはザック・スナイダーの意志を継いでダークなDC世界の拡大に成功することが出来るのか。

しかしそれでも、確かに違和感の残る点は所々にあった。 箇条書きで挙げていくと

 〇 ワンダーウーマンの衣装デザインの場違い感
 〇 MCUのような緩やかな展開を挟むことの無い、急速なヒーロー・アッセンブル
 〇 スーパーマンがバットマンに対抗意識を燃やす説得力の無さ     etc......

特に三つ目の『スーパーマンがバットマンに対抗意識を燃やす説得力の無さ』が顕著。

だってスーパーマンが推定三ケタ超の人間を巻き込んでいるのに対して、
バットマンは悪い奴らにコウモリ印の根性焼きを入れてるだけなんだもん。

それでいてクラーク・ケント=スーパーマンは、バットマンを悪魔だ悪魔だと新聞でコキ下ろそうとしちゃうのである。
観客が、「クラークさん、それはどうなんよ……」ってな感じになるのも仕方のないことだ。

でもまぁそれでも、言うて大幅な減点には繋がらない。 だってそれも含めて面白いんだもの。

とりあえず、皆、この「ジャスティスの誕生」を一度は観ておくべきだ。
MCUの波に乗り遅れてしまってる奴らや、最高にカッコいいコウモリ男を見たい奴ら。
君も、DCUという新しい映画の波に乗っていこうじゃないか。

temujin