「哀しいトムとジェリー。仲良く殺り合いな。」ラン・オールナイト ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しいトムとジェリー。仲良く殺り合いな。
ニューヨークがまるごと舞台の、命を取り合う壮大な鬼ごっこの開幕です。
休息ポイント一切なし!次々と追っ手がやってくる!この一晩を走り抜け!まさに!これこそが!“捕まったら最期”の!リアルな「逃走中」だ!
んー、堪能しましたねぇ。これまた安定のリーアム兄さんじゃないですか。彼の得意分野でしょう、もうこの手のジャンルは。「肉弾戦+銃撃戦+カーアクション×家族=最強親父」ですから。そこに強面性格俳優のエド・ハリスがマフィアのトップ役で参戦する訳ですから。更に「ほほえみデブ」ことヴィンセント・ドノフリオが刑事役で、ニック・ノルティ(最初、誰か分からなかったw)もチラリと登場したりして。おっさん指数が激高マックスなのもポイント高し!ですよ。
で、まず面白いのが画運びなんですよね。凝ったギミック使いまくりで。特に場面転換。ニューヨークが舞台な訳で、あっちこっちで思惑が飛び交い状況が刻々と変化していくんですね。事件が勃発し、誰かが兄さんを追い、兄さんは逃げる。「こっちで起きた」ことと「あっちで起きる」ことが、かなり距離があることもしばしばで。そこを繋ぐ空間移動が面白くて。A地点からふわっと空中へ上がり、鳥瞰で夜景を見せたと思ったら高速移動でB地点へと着地。つまりは箱庭なんですな、ニューヨーク全体が。その認識で以ってのカメラワークなんでしょう。まさに「鬼ごっこ」感覚というか。
ただね、このリアル鬼ごっこね、一筋縄ではいかんのですよ。追う側エド・ハリスと追われる側リーアム兄さんが熱い友情で結ばれてるってのが、この映画を最大級に面白くさせてる核な部分で。愛憎絡み合ってるんですね。単純に殺してやる!ではなくて。ちょっと一言では表現できないくらいにお互い複雑な心理状況で。いやあ、ドラマチックが過ぎますわ!てな感じでね、良いんですよ。
「哀しいトムとジェリー」とでも言っておきますか(喧嘩どこの騒ぎじゃないですね)。
まあね、練りに練った(のであろう)設定の割りには意外に展開が大雑把だったり、そんなに公衆の面前でバンバン人撃たないだろ!とか、ちょいちょい気になるトコもないこたなかったんですけども、概ね満足しております。
兄さん充したい方には最適な一品となっております。