グレート・ビューティー 追憶のローマのレビュー・感想・評価
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ジェップを形作る描写をローマと共に
ローマの風景とともにお届けする、創作するためのエネルギー、芸術、そして生きるとは、を描いた作品。ナビゲーターはその全てに関わりのある主人公ジェップ。
ジェップはなぜ小説を書かないのか。そのためのエネルギーを失ってしまったからと次第に分かってくる。
享楽から始まり、その裏にある無為な人生と謎のアート。人々はエネルギッシュに生を謳歌している。ジェップは享楽の輪の中にエネルギーがあるかもしれないと身を置くが、その輪からは漏れているように見える。
それでもローマを離れることはない。いつか訪れるかもしれない創作の意欲を待っているのかもしれない。
ジェップを動かしていたものは恋だった。
最初の恋のときに書き上げたものが彼の代表作で、それ以降書いていない。
新たな恋を求めてローマを彷徨っていたものの未だ掴めていない。それは最初の恋を引きずっていたから。
しかし、彼女の死の知らせがジェップに変化をもたらす。
初恋の相手もジェップを想い続けていた話はどこまで真実か分からないけれど、もう戻ることがない恋は、空っぽになっていたジェップのタンクにガソリンを注入した。
一見無秩序に見える出来事の連続が、ジェップというキャラクターを形作り、やがて収束していく様は面白かった。
過去の恋のパートをほとんど描かないのも良い。二人の恋を観る側が勝手に最大化できる。なぜ別れることになったのかも含めて。
ところどころジェップの妄想のシーンが挟まる。ある意味でこの作品の全てがジェップの内面であったのかもしれない。
ローマの景観と共に、彼の中の様々な感情が描写され続けたのだ。
ジェップの創作だけでなく、誰でも生きるためのエネルギーがいる。それを見出だせずにいると無駄な人生を過ごしてしまうことになる。ただ生きているだけではいけないのだ。
グレート・ダンディズム。
第86回アカデミー賞外国語映画賞受賞作。
最近の日本でのダンディといえば、滝藤賢一のあの番組が
つい浮かんでしまうところだが、ぜ~んぜん違って(当たり前)
ジローラモが如何にダンディラインを死守しても醸し出せない
真のダンディズムが漂っていた。
まぁ好き嫌いはあるだろうけど(私的にはけっこう苦手な部類)、
カッコいいといえばカッコいい、ニヒルってこういう人を指す。
やたらフェリーニへのオマージュというか、
そういう批評が多いのだけれど、それほど意識はしなかった。
(まぁ乱痴気パーティーとかは如何にもだったけど)
だってマストロヤンニやA・エーメとは並べられない!(爆)
今作の主人公、あんまり好きな顔立ちじゃなかったしなぁ。
さて。
主人公は…ローマの総てなんでしょうねぇ。
自身は訪ねたことがないので、景色も映画で観るばっかり。
綺麗と猥雑が混在するような雰囲気を持っている街だけど、
映像で観る限りパーフェクト!に近いほど様々な面を魅せる。
この映像美に浸っていられれば、141分耐えられる(と思う)。
語り口のない描き方にテーマが見えない観客は出てった人も
多かった。自身には、これが面白い・つまらないというよりも、
部分的に見入ってしまうか、聞き言ってしまう部分が多かった。
退廃的なムードは一貫しているが、主人公が特に絶望していない
ところが救い(爆)このオッサン、結構いいたい放題なんだもの。
パーティーで噛みついてきた女史に一喝!見舞うのもお見事だし、
家では「アバズレ」を名乗る家政婦と仲良くやっている。
自分が老境に近づくにつれ、ある意味恐怖心はあるのだろうけど
今でも初恋の想い出に苛まれているなんて何て初々しいダンディ!
男は初めての女を忘れないが、女は初めての恋を忘れないらしい。
(マツコの名言)
もうひとつ、こんな観方をしてはいけないのは分かっているけれど
最後に登場した修道老女、彼女も素敵な名言を彼に与えるのだけど、
翌日、階段を這いつくばって登る彼女に、エクソシストの名場面を
連想させられて仕方なかった(もちろん背面降りはしませんけどね)
だってその前日に主人公が司祭とそんな話をするもんだから…^^;
(日本人もチラリと出演してるのね。寝そべって歌う脚ギプスの女性)
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