リスボンに誘われてのレビュー・感想・評価
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【スイスの老いた歴史高校教師が、自殺を図ろうとしていた若き女性が落とした本に触発され、リスボンへ行き、ポルトガルの独裁政権時に生きた男の愛と青春を探す旅を描いた作品。】
■スイスの高校で古典文献学を教えるライムント(ジェレミー・アイアンズ)。
彼はある日、自殺を図ろうとしていた若き女性が落とした1冊の本との出会いで一変する。
アマデウ(ジャック・ヒューストン)という著者によって書かれた本に心を揺さぶられた彼は、著者に会うべくリスボン行きの夜行列車に飛び乗る。
だがアマデウは若くして亡くなっていた。
◆感想<Caution!やや内容に触れています。>
・ポルトガルでの独裁政権「エスタド・ノヴォ」は、微かに覚えていたが、まさかあの時代を舞台にした映画が有ったとは、全く知らず。
しかも主演は、ジェレミー・アイアンズであり、共演はブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング、メラニー・ロランである。
観ない訳がない。
・ご存じの通りジェレミー・アイアンズは、イギリス紳士を演じたらベスト5に入る名優であり、ブルーノ・ガンツもドイツの名優である。
灰色の瞳が印象的なシャーロット・ランプリングは、若き日の「愛の嵐」のトップレスでナチスの帽子とズボンを履いた強烈にエロティックなポスターに魅了され、その後も数々の名作に出演して来た名女優である。
良くまあ、これだけの俳優を揃えたモノである。
・勿論、物語も面白い。現代のスイスに生きるライムントが過去の独裁政権下のポルトガルに生きた青年アマデウの生と愛を探る旅に出て、当時を知る人々と接触し、アマデウの生き様に迫って行く所を、抑制したトーンで描くスタイルも、品が有ってとても良い。
<今作は、ラストも秀逸である。
ライムントがポルトガルに着いた当初に、バイクと接触し眼鏡を壊した際に眼鏡を直しに行った時に出会った、叔父がたまたまアマデウと知り合いだったマリアナと、逢瀬を重ね、ライムントがスイスに戻ろうと列車に乗ろうとした際に、“残っても良いのよ。”と優しく語りかけるのである。
今作は、平凡な日々を送っていたスイスの老いた歴史高校教師が、自殺を図ろうとしていた若き女性が落とした本に触発され、リスボンへ行き、ポルトガルの独裁政権時に生きた男の愛と青春を探す旅を描いた作品であり、彼の人生の再生の物語でもあるのである。>
I'm a boring. 人生を導くのは偶然。アーメン。
原作を読まねばこのストーリーの良さは分からない。
つかみは良かった。しかし、最初と途中が繋がらない。
原作にはきちんと描かれていると思う。大変に残念な映画。
三角関係と裏切りと別れ。そして、死。日本人好みの話にはなっているが、所詮、リスボンとロカ岬の環境映画の様になっている。
ロカ岬(?)には行った事がないので、この映画見て行きたくなった。
ファド聴きながら、バカリャウのコロッケを食べたいね。
「人生を導くのは偶然だ」
二回見ました。良い作品だと思う。しかし、最初の少女との出会いが偶然とは言えないくらい強烈で。
文学的で哲学的で幻想的な
文学的で哲学的で、ちょっと不思議で幻想的な雰囲気で始まり、ポルトガルの歴史の一端をかすめながらサスペンスフルに展開していくドラマ。そして再び文学的で哲学的にエンディングを迎える良作。
あれこれ考えるばかりで自分の中のモヤモヤの正体すら掴めずにいたライムントは偶然手にした本の中に書かれていたことが自分の考えていたことと同じだったこととに感銘をうけ、本の作者を訪ねることにする。
本人がすでになくなっていたため、ライムントの旅は当時のアマデウを知る人物を訪ねるものに変わり、アマデウの人物像や彼も参加していた反政府組織の活動などを知ることになる。
と同時に、ライムントの訪問を受けた人々は当時を振り返りながら今まで抱えていた陰鬱なものを消化し受け入れ乗り越えていくのだが、これはアマデウがライムントを介した導きだったように思う。
そして導き手となっていたライムントもアマデウに導かれた一人だ。
冒頭の授業シーンの中で、古代ローマ人は考えることと行動は同じだという。それはつまり現代人は考えることに行動が伴うかどうかは別だということだ。
今まで考えるだけで行動が伴わなかったライムントは元妻から「退屈な人」と評されるが、この旅そのものや、「やっと誘いましたね」のような行動により「退屈ではない人」に変わった。
草原の緑よりもそれを描いた絵画の緑の方が美しいという言葉が出てくる。現実よりも理想の方が美しいということだと思う。
理想を想い描いて反政府活動をしていた人々の今の現実に、想像していた美しさはないかもしれないけれど、考えるだけで立ち止まってはいけない。
ほぼ全ての登場人物がアマデウの導きで一歩を踏み出す。文学的で哲学的で幻想的な、「面白く興味深い言葉」の多い作品だった。
日常が変る時・・
原題は原作小説と同じNight Train to Lisbon(リスボン行きの夜行列車)、スイスのベルンからポルトガルのリスボンまではフランス、スペイン経由でおよそ1700km、今は無き寝台特急の富士が24時間かけて東京~西鹿児島1600km位だったから驚くほどの旅ではない、会社帰りに新橋駅のホームで走り去ってゆくブルートレインのテールランプを見送って、ふと日常から逃れてこのまま旅に出られたらと想像していた若い頃の衝動が蘇ってきた。
主人公が知的好奇心に突き動かされ人々を訪ね歩く展開は上質なサスペンスにも似た高揚感があるから不思議だ。導入部も上手い、橋から飛び降りようとしている若い女性を助けるが赤いコートを残して失踪してしまう。コートのポケットから出てきたのがリスボン行きのチケットが挟まった小さな本、アマデウ・イナシオ・デ・アルメイダ・プラド著「UM OURIVES DAS PALAVRAS(言葉の金細工師)」という哲学的な私小説だ。著者の人生哲学と半生に惹かれ運命に操られるような旅が始まる。自分探しと言うにはちょっとお歳を召しているが知的で不器用な所は万年青年と言えなくもない。物語の焦点は過去に遡りポルトガルの圧政、サラザール政権の独裁、弾圧時代から1974年のカーネーション革命までのレジスタンス運動にシフトする。アマデウの純粋さ故に別れを告げたエステファニアの胸の内も痛いほど分かる、赤いコートの女性の謎も解け自身も良き理解者に恵まれる、その先はあえて描かず余韻を残すところも素晴らしい。
紀行映画にも負けない風景描写、抑えた静かな演技、高い格調が感じられる秀作でした。
やっぱり女が絡むとこじれる
ポルトガルの反体制派として一緒に戦ってた二人の男たちがある女性が現れたことで関係が崩れて離れ離れになっちゃう話。
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うん、異性関係ってこれまでの人の関係を崩すよね(笑)でも今回の場合は元々親友だったんだから話し合えよって思った。コソコソ隠れてイチャイチャするからじゃん(笑).
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しかも女の方も大げさに見た瞬間に太陽に照らされたみたいに言ってたけど、結局イケメンだったから一目惚れしただけやん。好きになっちゃた段階で話してればもっとマシな結果になったはず。
人生は退屈なんかじゃない
レンタルケースの帯には”ミステリー”と表記されていたけど、
私的にはラブストーリーかな…と。
過去と未来。
二つの世界を生々しく、
それでいて物悲しく描かかれてた。
人生は、ドラマティックで劇的。
背中を押されるラストワード
最後の方で、主人公とリスボンで出会った女性が恋仲になりそう(なったのかな?)になった時には平凡な終わり方をするのかとガッカリしたけど、最後のラストワードで挽回。笑
70年代と現代をシンプルにつないで観やすい作品
邦題が内容と結構はまってる作品でした。
「リスボンに誘われて」。
メラニー・ロラン、ブルーノ・ガンツ目当てでしたが、
作品としても良質でした。
2時間弱でよくまとめてあるなと。
しがない人生しか送れないと思い込んでいる高校教師で中年男性の主人公の人生と1970年代に起こったポルトガル革命を絡めて、過去と現代を行ったりきたりしながらうまく仕上げてあると思いました。最初から最後まで飽きさせず、ストーリーもそんなに難解でもなくて、シンプルでしたし。
しかしポルトガルって1970年代まで独裁政権だったんですね、はじめて知りました。本編でもでてくるPIDEという秘密警察は、ドイツのゲシュタポを模したと言われ、二次大戦前に創設され、名称は変わっても戦後、革命がなされるまで活動していたんですね。しかも東側の国ではない国で。
主人公がリスボンに行くきっかけとなった、革命で命を落とした若者の著書を解読していくシーンは、ちょっと難しくもあったけど、仕事もほったらかしにして、夜行列車に飛び乗りるくらいの内容だったんでしょうね。
本が文庫本サイズのハードカバーで、ちょっといいですね。日本にはない体裁で、手触りとかちょっと楽しんでみたいなと。
お目当てのメラニー・ロランは、確かにヒロインだったけど、過去シーンのみだし、出番多くはないし、多少不満(笑)あと、老後もメイクしてでてほしかったなあ。しょぼくてもいいので、役者がかわったことに違和感ありあり。
リスボンの町並みや坂の石畳、ホテルからの眺望、どれも素敵でした。一度は行ってみたいと思わせますね。70年代のシーン、特に秘密警察からレジスタンス達が逃げる夜のシーン、いわせないかんじでとてもよかったです。ワーゲンのビートルも雰囲気だしてた。
ラストシーンはあんなかんじが女性陣にはウケルんでしょうね(笑)DVDでもう一度ポルトガルの歴史もちょっとかじりつつ、楽しんでみたい作品です。
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