劇場公開日 2014年8月29日

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「ファビアン君がキラキラしている☆☆☆☆☆」グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ファビアン君がキラキラしている☆☆☆☆☆

2023年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

萌える

冒頭の山並み、トライアスロンのスタート場面、スイミングの場面…。映像が綺麗です。
 そしてジュリアンが自転車に乗って喜ぶ場面。木々と光・風が歌っているという情景はああいうのを言うのでしょうね。観ているだけで、ワクワクしてくる。世界ってこんなに美しく、楽しみに満ち溢れたものだったっけ。自転車に乗りたくなります。

でも、それより何より輝いていたのはジュリアン(ファビアン君)。決して負けない。

息子に向き合えない父。それにいら立つ母。理解のない大会事務局。あんな仕打ちをされたら私はどうするのだろう。…

息子の真剣な願いだけど、無謀な頼み。私だったらどうするのだろう。…

両親に守られて、背中を押してもらっていた息子が、自分の力で踏み出す。親を置きざりにしたって進む。それが自分(とパパ)の決めた道だから。
                           (フランスだなあ)
  え、置いていくんかい?と日本人の親の立場からすると突っ込み入れたくなりますが、その時のジュリアンの顔の雄々しいこと。
  子どもの巣立ちです。
そして親は、そんな息子に勇気づけられてまた一歩踏み出す。
親を置いていったくせに、親が追いつくと嬉しがる息子。パパと僕とが決めた道だもの。         (これ以上詳しく書くとネタばれになるので断念)

二転三転するようなドラマはありません。比較的ストレートに話は進みます。話はコンパクトにまとめてあるので、スポ根を期待するとコケます。
 ですが、全体的に等身大の人物像を丁寧に描いていて、最初のギクシャクした場面では本当に心が痛くなりますし、爽快な場面では気持ちが高揚しますし、レース場面では力入ります。
 (ジュリアンは拗ねた顔すら愛おしい。パパの疲れた顔すら後半はセクシーです。ママは息子の為ならあの迫力。)

家族の再生物語。
原動力はジュリアン。燃え尽きた父に火をつける。トライアスロン経験者とは言え、加齢は半端ない。あきらめるのか、それとも…。

泣いてしまいましたが、ユーモアのセンスも溢れていて、小気味良い。
とてもすがすがしい、小さな宝石のような映画です。

試写会にて視聴。素敵な時間をありがとうございました。
皆さんも、ジュリアン達とぜひ素敵な時間を過ごして下さい。

PS.
 ディックとリック・ホワイト父子が、この映画のポールとジュリアンのようなやり方で、実際にトライアスロンに参加、アイアンマンの称号を勝ち取っているのですね。何回も。尊敬します。
 「ジュリアン何もしていない」というレビューもあるけれど、参加にこぎつけたのは、ジュリアンの行動力。それに、自分の意志の通りに動かない体で父と呼吸合わせてバランスとるのってどれだけ大変なことか(映画の中でもこけて入院したのはジュリアン。うまく体をかばえない)。「ボート乗ってるだけ」って、水の上で太陽にさらされていることがどれだけ体力を奪うか、熱中症状態になるってことだ。でも、ねをあげない。父も頑張ったけれど、ジュリアンも頑張った!!
 「ジュリアンのわがまま」というレビューもありますが、もし、ジュリアンがあなたのように体を動かせるのなら、「トライアスロンに参加したい」というのはちっともわがままではない。のに、ハンディキャップがあると「わがまま」になるのだよなあ。尤も、ジュリアン一人で参加できる種目を探せばいいのだろうけれど、それではジュリアンにとって意味がない。パパと一緒にすることが大切だったのだろうから。ジュリアンだって無謀なことはわかっているから「完走しなくてもいいんだ」と言う。でもパパが言う。『否、それじゃだめだ」。そして…。

とみいじょん