「もっと大きなスクリーンと最新の音響システムで観たかった」ネイチャー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと大きなスクリーンと最新の音響システムで観たかった
長年にわたって撮り集めたフィルムを長編ドキュメンタリーに仕上げた「ディープ・ブルー」(2003)は大自然の神秘や脅威をなんのてらいもなく見せてくれた。この作品を機に“ネイチャー系映画”というジャンルが誕生するが、続く作品がどれも環境破壊をテーマに自然保護を振りかざすものばかりになってしまった。
さてこの作品はというと、オープニングに都会の中の少女をもってくるが、これから都会を離れて大自然へ旅に出るというストーリー仕立てに文句はない。
ただ、ラストで再び都会の少女に戻る必要があったのだろうか。大自然の凄さを目に焼き付けて映画館を出たとき、喧騒の街の中であらためて自然の大切さを痛感させることこそ、こうした作品の使命だと思う。映画の中で現実に戻す必要はまったくないのだ。これは余計なお世話というものだ。
地球上に広がる大自然を7つのテーマに分けて旅する映像はどれも素晴らしい。とくにヴィクトリアの滝を落下するシーンは、何度も予告篇で見ているのだがワクワクする。
ナイルのワニも圧巻だ。ワニが潜んでいることをわかっていても水を飲みに来なければならない動物たち。潜水艦のように水中で獲物を待つ大型ワニ。このシーンの編集が実に上手い。
ここからは本篇の評価から少し外れる。
この作品は原題が「Enchanted Kingdom 3D」。つまり映画館の大画面で3Dで観てこそ醍醐味がある。もちろん360°から包み込むサウンドも魅力だ。当然、都内にも登場した大型スクリーン“TCX”&最新音響システム“DOLBY ATMOS”を備えた劇場で観られることを楽しみにしていた。
ところが「アナと雪の女王」の大ヒットで大きな箱が占拠され、「ネイチャー」は通常の“DOLBY Digital”の箱に回されてしまった。しかも、あろうことかそのシネコンでは2D上映だったのだ。仕方なく同じ系列のほかの映画館で観たが、せっかくの最新システムの本領を体験させることができるソフトがありながら残念で仕方ない。
「アナと雪の女王」にはなんの罪もないし、企業として興収を優先させるのは当然のことだ。ただ、平日に1回とか週に1回でも見応えのある環境で観てもらおうというサービス精神があってもよかったのではないかと思う。