「魔女とメス犬の子供たち」悪童日記 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
魔女とメス犬の子供たち
第二次大戦下のハンガリー。戦火から逃れる為、双子の兄弟は田舎の祖母の家に預けられ…。
戦時下の子供を主役にした映画は珍しくないが、感動やハートフルな要素は一切微塵もナシ。
過酷さ、悲惨さ、不条理さは『火垂るの墓』に匹敵し、冷徹で重苦しい人間ドラマはホラーかミステリーのような異様な雰囲気。
双子を襲う辛く苦しい日々。
周囲から“魔女”と呼ばれる祖母。優しさの欠片も無く、双子に重労働を強いる。自分の娘の事を“メス犬”と呼び、その娘が産んだ双子の事を“メス犬の子供”と呼ぶ。
周囲の大人たちに何度殴る、蹴るを受けた事か。痛々しい痣、傷、暴行を受ける様は見るに堪えない。
盗人を追い掛けるも、逆に盗人呼ばわり。
双子の苦境に見ていて本当に胸が痛いを通り越して胸糞悪くなる。
この双子は潤んだ瞳で擁護を求めたりしない。
過酷で辛い日々にどう打ち勝つか。
強くなるしかない。
生きる為には盗みをもする。
お互いを殴り合い、ベルトでぶち合い、痛みに慣れようとする。
もはや狂気すら感じる。
子供の順応力と言うか、この苦境での成長、逞しさは驚くべきものだ。
やがて待ち望んだ母が迎えに来る。夫とは別の男との間に産まれた妹を連れて。
母親に連いていくか、ここに留まるか、双子が選んだのは…。
別に祖母に情が沸いたとかここでの生活が好きになったとかではない。
子供心に察したのだろう。
ここに留まり、ここで生きていくしかない事を。
母親が祖母が言うように“メス犬”である事を…。
双子が笑顔を見せる事は無い。
やがて祖母が他界する。
出兵していた父が迎えに来る。その父をある場所へ連れていく。
魔女の孫たち。言うなれば、悪魔の子か。
過酷で苦境の時代、生きていくには子供でさえ悪魔にならなければならないのか。