やさしい本泥棒のレビュー・感想・評価
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タイトルに騙されました
タイトルからちょっとコメディっぽい映画だと思ったら全く違ってました。ナチス政権下のかなりのシリアスものでした。ナチスものでハッピーエンドはありえないかと思っておりましたが、案の定想像以上に悲惨な結末でした。特に好きだったリーゼルのために、冷たい川の底に落ちた本を潜って拾ってあげた金髪の少年も結局空爆で死んでしまったのは実に切なかった。ただ、リーゼルとマックスが生き残っていたのは救いでした。
『永遠にレモン色の髪をしたあの少年も』
『永遠にレモン色の髪をしたあの少年も』レモン色?
図書館に『我が闘争』を置く事をどう考えるか?
図書館の自由と言うものがある事をご存じだろうか。
しかし、ヨーロッパでは、『我が闘争』を図書館に置く事は出来ない筈だ。
だがしかし、
日本は置ける。
それはともかく、ドイツよりも長くアメリカと戦った日本にはナチス・ジャパンはいなかったのか?いたとすれば、彼らは責任を取ったのだろうか?
大日本帝國の場合、なんだかんだ言って、誤魔化して来た歴史があると思う。誰かを利用して、数人の戦犯をアメリカに粛清させて、生き延びているんじゃないかなぁ?
しかし、当事者はもうこの世にはいないのだから、真実を明らかに出来ない。つまり、絶滅危惧種大和民族のアイデンティティと大和民族としての本当のナショナリズムの欠如が邪魔してんだろうね。残念だ。
この少女は連合軍に人生を翻弄されている事を先ずは理解させたいのだと思う。
英語でなぜ演じさせたのか?それだけが画竜点睛を欠く事になった。
1938のドイツで、両親が共産党員だったので里子に出されることにな...
1938のドイツで、両親が共産党員だったので里子に出されることになったリーゼル(ソフィーリネッセ)。ハンス(ジェフリーラッシュ)とローザ(エミリーワトソン)という夫婦の家にもらわれる。この家族と、リーゼルが越して来たその日に一目惚れしてきたルディという少年。ハンスの命の恩人の息子マックスというユダヤ人の青年。の5人が主なキャラクター。
ナチス支配下でハーケンクロイツ掲揚しないと反逆とされてた時代に、人間らしく生きた人々がいたみたいな映画。
ローザが最初は凄い憎たらしくて、目を尖らして二言目にはロクデナシと罵るどぎつい感じの女性なんだけど、それは生き抜く為のポーズで実はめちゃめちゃ優しい。
マックスが回復したのをわざわざ学校の教室にきてリーデルに知らせる場面や、夫を徴兵された後でアコーディオン抱き抱えて疲れて眠る姿に泣けた。まさかこの人に泣かされるかという感じ。
リーゼルの弟が冒頭で死ぬんだけど、その時に墓堀り人の手引書という本を拾う。字が読めないリーゼルだったがハンスと一緒に最後まで読む。その後ナチスの命令で街中にある本が集められて燃やされるんだけど、燃えカスの中からまだ形のある本を拾うリーゼル。その様子を遠巻きに見ている人がいてヒヤヒヤするんだけど、これキッカケで沢山の本を読めるようになる。
親衛隊とかゲシュタポに連れてかれるから迂闊な事は出来ない中で、本を通じて言葉を学びリーゼルが成長していく物語。凄く良かった。
さりげないやさしさで溢れた映画
悲しい映画ともいえる。あっけなくみんな死んでしまう。
でも、それと同時に人間の美しさにも気づかせてくれる。
リーゼルをひきとった父も、言葉がキツくて怖いように見える母も、隣に住む少年のルディも、そして市長の妻も、みんな心根が優しい。
だからこそとっさに庇って、目をつけられることも。でも行動は間違っていない。そうするしかなかった。
最初は言葉が読めなかったリーゼル。父と一緒に勉強し、本を読む楽しさを知る。
そして言葉がマックスとの繋がりとなり、彼女自身の糧にもなっていく。
言葉にすること、それを残していくことの大切さを思った。
素晴らしかった
里親映画と教えてもらって見る。里子と言っても、けっこう大きくて里親も我が子として育てようなどという気持ちは特になさそうで、しかもママは意地悪ばあさん。しかしユダヤ人をかくまうことで、チームとして一体となり親子や家族などを超越したかのような連帯感が芽生えて行く。親子や家族であっても心がバラバラなケースもあるだろうから、それよりも心と心が結びている関係が育まれるならなんだっていいのではないかと気づかされる。
空爆でみんな亡くなってしまうのだけど、ユダヤ人の青年と再会できて涙が出た。
強く反戦を訴える
ドイツ系オージー作家、マルクス ユーサックのベストセラーを映画化した作品。作家はまだ若い人でメルボルンに住んでいる。自分が祖母から子供の時から聞かされてきた体験談を、自分だけのものにしておくのが惜しいので、少しでも多くの人と共有したくて、6年あまりかかって小説という形で完成させた、という。原作は、若い人のみずみずしい感受性が現れた詩のように、美しい文章で描かれている。
ストーリーは
1938年、ドイツ。ヒットラーを総督とする軍部の力が日に日に増強している。公然と赤狩りが行われ、共産主義者や自由主義者が、地下に潜伏しなければならなくなっていた。共産党の活動家だった両親は、二人の子供を養子に出すため汽車で移動中だったが厳しい逃亡の末、男の子は病死する。残った13歳の女の子ライゼルは、ベルリンの街に着き、無事に養父養母に引き取られる。男の子を引き取るつもりでいた養母ローザは、ライゼルを見て落胆を隠さない。いつもガミガミ夫やライゼルをしかりとばしているばかりの養母の態度に傷つくライゼルだったが、養父ハンズは優しく、ライゼルを一人前の女性のように扱ってくれた。
ライゼルは13歳になるのに字が読めない。隣の家の仕立て屋の息子ルデイーは、ライゼルといち早く仲良くなり、字が読めずに学校で馬鹿にされるライゼルに親切にしてくれる。二人はすぐに無二の親友同士となる。養父ハンズはペンキ屋だった。家は貧しく、養母はお金持ちの家の洗濯物を引き受けて小銭を稼いでいた。貧しくて家族の食費捻出にも苦労していたこの家庭に、ある夜マックスというユダヤ人の青年が助けを求めて転がり込んでくる。栄養失調で衰弱していて介護が必要だ。養父とマルクスの父親とはかつての戦友で互いにどんな時でも、どんな状況に陥っても互いに助け合うと誓った中だった。ハンズとローザは迷いなくマルクスを迎い入れて、かいがいしく世話を焼く。マックスはやがて回復して、ライゼルの読み書きの勉強を助けて、頼もしい話し相手になる。
ライゼルは本が読めるようになって嬉しくて、本が好きで好きでたまらない。しかしナチス軍政を支える市民は、軍に忠誠を誓うために街に本を持ち寄って焼きつくすイベントを繰り返していた。今や文学などに浸っている時期ではない、ヒットラーのナチスドクトリンだけを読んで強いドイツを統一しよう、という社会運動が広がっていた。ライゼルもルデイも いやおうなく学校からこういった市民の集会に参加して、ヒットラーを讃える合唱曲を何の疑問もなしに歌うが、内心では、ライゼルは、焼かれていく本を見ていて、ひとりで胸を痛めていた。本が読みたい、今まで知らなかったことを沢山教えてくれる知識の源を、もっと自分のものにして心を豊かにしたい。ある夜、ライゼルは、街で焼かれた本の山から一冊の、まだ焼却されていない本を盗んで自分のコートに隠して持ち帰る。そこを車に乗った夫人に観られてしまった。それが、あとで養母ローザの洗濯物を届けに行ったときに、市長夫人だったことがわかって ライゼルは、叱られるのではないかと怯える。しかし、市長の妻はライゼルを自分の家の図書室に導いて、いつでも本を読みたいときに訪ねてきて良いと言ってくれた。本を自由に読むことを許されてライゼルは嬉しくてたまらない。家に帰れば読書好きの自分を温かく見てくれる養父ハンズが居り、何でも知っているユダヤ人のマックスが居てくれる。ライゼルは幸せだった。
しかしマックスが隠れる地下室は冷たく湿気が多い。隠匿生活も2年を過ぎるとマックスは重い肺炎になって死線を彷徨う。ライゼルは毎日マックスの枕元で本を読み聞かせた。彼は何の反応も見せない。しかしライゼルは物語が人の命を保つための気力を与えてくれると信じて、祈るような気持ちで、毎日市長の家から本を持ち出してはマックスのために本を読んだ。家族の懸命な介護のおかげでマックスは奇跡的に回復する。
しかし戦争が広がり、ユダヤ人迫害が、日に日に激しくなっていた。ある日近所に住む青年がユダヤ人の血が混じっているというだけで、軍に引き立てられていった。ハンズはそれを見て、たまらずに軍人たちに向かって連行を妨害しようとする。その事件によって彼は反政府危険分子のレッテルを張られて、すでに中年を過ぎて老年に達しているのに兵役に徴兵されて前線に送られる。地下に隠れていたユダヤ人のマックスは其れを機会に、家族の安全のためにひとり出ていく。
しばらくして、ハンズは前線から傷を負って帰ってくる。やっと家族がそろって過ごせる幸せも、長くは続かなかった。ベルリンの街が爆撃され、ハンズの家も直撃弾を受け倒壊した。朝になって、ハンズとローザの冷たくなった遺体が掘り出される。ライゼルは夜中まで地下室で本を読んでいたため生きて、がれきの中から助け出される。しかしライゼルの目の前には、変わり果てた虫の息のルデイが横たわっていた。ルデイは力なくライゼルに微笑みかける。ライゼルは心から本心だったアイラブユーを彼に伝え、ルデイの消えていく命を抱きしめてキスをしたとうお話。
ライゼルは再び孤児になり、紆余曲折の末アメリカに渡り結婚して子供を産み、自分の経験を子供や孫に語り聞かせた。それを今は、オーストラリアに住む孫が書き留めて本にして、ベストセラーになった。
ドイツ人夫婦を演じているジェフリー ラッシュと、エミリー ワトソンという熟練役者が素晴らしい。エミリー ワトソンは100%ロンドン生まれのイギリス人だが、ドイツ人特有の 飾り気ない素朴でがさつで怒鳴り散らしてばかりいるが、強くて心は温かいドイツ人のおっかさんを演じている。100%オージーのジェフリー ラッシュも貧しいペンキ屋で自分たちが食べていくだけでも大変なのに、地下にもぐった活動家の娘を養女に迎え、見つかれば家族ごと処刑されるのを覚悟でユダヤ人を、二年間もかくまったりする、度胸のある頑固親爺をしっかり演じている。彼らの姿を見ているだけで勇気が湧いてくる。
主人公にライゼルを演じた13歳の役者、ソフィー ネリスの可愛らしいこと。この少女に恋する14歳の役者二コ ラースクも負けずに可愛らしくて、二人がかけっこをしたり、ナチ教条主義の同級生に虐められたりする姿に目が離せない。
ナチズムの波が徐々に 普通の市民の生活の中に浸透していく姿が恐ろしい。人々が物をいうのを控えるようになり、自由な行動をとらなくなり、互いに顔を見合わせながら押し黙っていく一方、軍人たちが自由自在にのし上がっていく様子が手に取るようにわかる。昨日の人が、今日になると別人のようにナチ礼賛者になっている。学校で組織化されたナチ少年隊が声高らかに威勢の良い歌を合唱し、本を焼き、軟弱者を虐める。昨日までサッカーボールを追いかけていた少年が、今日はナチ少年隊の制服に身を包みナチドクトリンを斉唱している。自分と同じことをしない少年を、臆病者と決めつけて暴力をふるう。異端者や落伍者を作り出して虐めることによって、集団を強化する。集団ヒステリーの中で自己陶酔する。
そういった先に、どんな結果が待ち構えているのか 私たちはすでに知っている。だから、それだけに時の力に巻き込まれて自分の口を閉ざしてしまうことの誤りを強く認識させてくれる。「本を焼く」という、長い人間の歴史を作り出してきた知の集積を否定するような社会を再びどんなことがあっても許してはならない。この映画では、ベルリンに戦時下暮らしたドイツ人家庭の姿を描くことによって、反戦を強く訴えている。とても良い映画だ。しみじみと、作者のおばあさんへの愛情が伝わってくる。
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