「もっと話題になっても不思議ではない」真夜中の五分前 えのきちさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと話題になっても不思議ではない
『真夜中の五分前』を鑑賞。
「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲監督最新作。
今作は日中合作であり、舞台は本多孝好の原作小説とは異なり日本ではなく上海となっている。
主演は三浦春馬、双子のヒロインには中国の人気女優リウ・シーシー(二役)。
時計の修理工リョウ(三浦春馬)は一卵性双生児の姉妹と出会い、姉ルオラン(リウ・シーシー)と恋に落ちる。妹のルーメイは性格は全く異なるものの見た目に区別はつかない。
そんなある日、旅先であるモーリシャス沖で水難事故に遭遇し一人が命を落としてしまう。助かったのは妹ルーメイであるというのだが、ルーメイの恋人ティエルン(ジョセフ・チャン)は助かったのはルーメイではなく姉ルオランだと主張する。
果たして助かったのは姉妹どちらなのか。
物語はラブストーリーの様相を見せるが実はミステリー要素を含んでおり、集中して観ていないと姉妹の区別がつかなくなってしまうので注意が必要だ。一人二役なので顔が同じなのはやむを得ないが、髪形も同じなので全く区別がつかないのである。
だが、注意して観ていればわかる造りにはなっている。
オール上海ロケ&オール中国語である今作。
監督含めたスタッフと主演男優のみ日本人であり、その他のキャストは全て中国人。言語も中国語。三浦春馬もほぼ100%中国語で演じており、演技としても全く違和感のない熱演であった。
しかし、なぜ日本人であるリョウが中国で時計の修理工をしているのかというような説明は一切ない。それならいっそ中国人役で良かったのではないかと思ってしまう。
映像は行定監督らしく終始美しい映像。
アンティークな時計店の雰囲気などは好きな人にはたまらないであろう。
全体的にはラブストーリーとしてはかなり中途半端な印象。
ヒロイン姉妹はどちらにも感情移入しにくく、主演のリョウに感情移入すると振り回される展開にイライラしてしまったり…。
しかしミステリーとしては敢えて説明不足気味にしてミスリードしていく展開としては成功していると言える。
それにしても行定監督の最新作(しかもお正月映画)にしてはあまりにも宣伝がなされていないと感じる。上映劇場も少なめだし、観客もそれほど入っていない。
あらすじだけでもミステリアスな本作、宣伝すればもっと動員できそうなものだが…。
行定監督の神通力が弱まっているのか、はたまた日中合作である事が影響しているのかは定かではないが、もっと日の目を見ても良い作品だと感じる。