「カメラは現実に介入している」THE DEPTHS 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
カメラは現実に介入している
濱口竜介監督の自主製作『何食わぬ顔』は映画を作る青年たちの話で、『親密さ』と『ドライブ・マイ・カー』は演劇を作る人の話で、この『The Depth』はカメラマンとモデルの話だ。『親密さ』や『ドライブ・マイ・カー』は映画や舞台を通して、人と世界を見つめる人の話だが、そうした作品群とも共通点のある作品だと思う。韓国から友人の結婚式を撮影しにきたカメラマンが、男娼の青年を見出し、撮影してゆく。モデルとカメラマンの関係はいつしかそれを超えていく。
石田法嗣演じる男娼の青年は、カメラで撮られることでその魅力を高めていく。カメラは現実を切り取る機械だが、一人の人間に向けた時、その人物に関わっている。カメラはただ現実を切り取るだけでなく、ある意味で介入している。
ラストカットが本当に素晴らしい。同じ方向を向いていたはずだけど、決定的にズレていく人間関係というものがあるが、そういうものが象徴的に映されていた。『ドライブ・マイ・カー』にもこれと似たようなシーンがあった。これの引用だったのだろうか。
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