「傑作になるはずが余計な改変で台無し」寄生獣 完結編 PKAさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作になるはずが余計な改変で台無し
本当にこれだけは声を大にして大勢に(可能なら制作陣にも)伝えたいのでぶっちゃけて書きますね。
まず、前編は本当に非の打ち所もないほど最高でした。後編も前編の緊張感はないものの上手にまとめていて、このままやれば「漫画原作の傑作実写映画作品」が生まれるはずだったんですよ。しかも大好きなのに長いこと映像化されずにいたのが、ついに映像化された「寄生獣」で。
それが最後の最後で本当にとんでもない改変をしてくれました。なーにが「大量の放射性物質」ですか!
直前に「放射性ガレキ受け入れ反対」みたいな看板が出てましたけど、そんなふうに呼ばれるものは今の日本では「東日本大震災の被災ガレキ」以外に存在しませんよね?あれは放射性物質なんかほとんど付いてないものを、何とか他地域の処理施設で処理してもらって復興を早めようとしていたのを、おかしな活動家が「放射性物質まみれだ」などと言い募って邪魔していたのが実際のところですよ。
それが、フィクションだからってなんで細胞が死滅するほどの放射性物質が実際に付いていることになってるんですか?
そんなものが他地域で受け入れた被災ガレキに付いていたなんていう話が、妄想まみれの活動家情報以外に1つでもあるんですか?
あの被災地いじめのような活動家たちに散々不快な思いをさせられてきた人間の一人として、本当にこの改変は何もかもを台無しにするレベルのものです。予約して買った前編のブルーレイを割って捨てたくなるくらい。
そしてさらにひどいことに、この安易な改変は、オリジナルの「有害化学物質」だったら問題がなかった科学考証まで崩しているんです。
原発事故からの放射線騒動で勉強した方も多いと思いますが、化学物質と放射性物質は有害性の発現の仕方が全く違います。化学物質なら何らかの形で体内に取り込まれて初めて影響が出ますが、放射性物質は近付いただけで有害なんですよ。つまり、体内に打ち込まれて後藤がめちゃくちゃになり、ほんの一部しか取り込んでないはずのミギーが形を保てなくなるほどダメージを受けるような量の放射性物質が実際にあったら、シンイチが数ヶ月後?にピンピンしてるなんてありえないし、後藤はあの空間に入ったあたりからおかしくなってないと理屈に合わない。危険な量の放射性物質なら近付くだけでも危険、というのが放射性物質の怖さなんで、本当に放射性物質を甘く見過ぎとしか言い様がないです。
そしてもう1つ。
脱原発への思い、みたいな賛否両論の思想を乗せるなら、こういう大勢の人が大事にしてる作品ではなく、自分のオリジナル作品でやってください。大切な預かり物の作品に、原作にない政治色を付けるのはやめていただきたい。正直、仮に私が持ってる政治思想をキレイに体現するような色を付けられても、「そういうのは自分の作品でやれ。他人の作った人気作品を利用すんな」って思いますよ。
こういう形で作ってしまった劇場版はもうしょうがないですが、幸いにして問題なのは台詞と看板だけなので、比較的容易に原作設定に戻すことが可能なはずです。私としては、せめてDVD/BDでは「鉄筋に付着していた大量の放射性物質」ではなく「鉄筋に付着していた有害化学物質」に差し戻した別バージョンでも見られるようにしていただきたいところ。「放射性物質バージョン」を無かったことにしてほしいとまでは言いませんから(そうしたら評点は1.5から4.5くらいまで跳ね上がります。実際、この改変以外は本当によかった)。
ああ、あと後藤がちょっと暴れ足りないので、特殊部隊との戦闘が追加された長尺版があるともっといいなぁ、と思います。
全くその通り。
原作から離れた脚本を作ることに全く抵抗がありません。映画とはそういうものだと思うので。
しかし、放射性物質とかいうあたりで、一気に興醒めしました。おそらく、原作の本筋を離れ過ぎてしまったからだと思います。
エゴをテーマにするなら、扱うべき材料として採用すべきは放射性物質じゃないだろうと。
まあ、後編からおかしいと感じた要素はこれだけに限らず、作成者側に何かおかしなチャチャみたいなものが入っちゃったんでしょうかね。
惜しい。
前半は良かったのに。
放射性ガレキの改悪については、ほんとうにそう思います。
関係者は美味しんぼの事件で何も学ばなかったのでしょうか。
作品に政治的なメッセージを乗せようとする方々自身が、社会的影響や科学考証や事実関係の調査を軽視しているだろうということに、日本の深い闇を感じます。
おっしゃる通りだと思います。
そうですよね、放射性物質の処理をゴミ焼却工場でやるというのはあり得ません。
技術考証がやや不足していましたね。詳しい方から見れば不満の残るところでし
ょう。
でも、全体を見ると出演者さんは皆、好演して特に深津絵里さんは素晴らしかっ
な。余さん、国井さん、染谷さん、ミギーもね・・・・・
他には、橋本愛さんが体を張って頑張ってました。思い切りのいい女優さんで
新一との濡れ場は、単なるラブシーンではなく苦悩する現代人をいやす聖母マ
リア様のように神々しく感じられました。
俳優さんそれぞれに思い出の残る作品になった事でしょう。映画っていいもん
ですね・・・・・・・!!!!