「残酷で愛おしい“寄生獣”」寄生獣 完結編 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
残酷で愛おしい“寄生獣”
名作コミックの実写映画化後編。
先日レンタルで見た前編が思ってたより面白かったので、完結編は劇場で。
素直に劇場で観て良かったと思った。
まだまだ序章的だった前作に比べ、ストーリーもテーマも深みを増し、VFXもアクションも見せ場が増えた。
幾つか残念な点もあった。
前半はシリアスで見応えあったものの、後半は最強パラサイトと戦う少年ジャンプ的展開に。原作通りなのかもしれないし、工場での決戦はクライマックスに相応しいし、浅野忠信の怪演は申し分無かったのだが、あくまで個人意見として、急に流れが変わった印象を受けた。
また、ちょっと最後の内容に触れてしまうが、全て終わってのミギーとの別れ、その後の展開など、濃密だった前半と比べ急ぎ足になってしまったような感じも受けた。
それでも期待を裏切らない出来だったのは、作品が持つテーマ性無くして語れない。
「我々はか弱い」「だからいじめるな」
田宮良子のこの台詞には正直驚いた。
寄生生物は人間を食らうおぞましい生物ではないか。
しかし、銃など人間の攻撃に呆気なく命を落とす。
実は脆い命なのは人間と同じなのだ。
この台詞と並行して描かれる特殊部隊による寄生生物急襲シーン。
人間=善、寄生生物=悪という概念は崩れ去った。
人間ほど自らの権利や主張を盾にし、他を脅かす生物は居ない。
ここで、予告編でも印象的だった広川の台詞と、真の“寄生獣”の意味が重く響く。
復讐心に駆られ幼子に手をかけようとする人間。ただ快楽の為に殺人を繰り返す人間。
ある声に導かれたからとは言え、人間を駆逐する寄生生物。
残酷な一面を持つ両者の共存は可能なのか。
容易くはない。だが、希望はある。
それを成し得るのは、人間の最も尊く本能的な感情。
人間が人間である所以の、無償の慈しみ、守りたいという一途な愛。
その感情こそが“寄生”する。
妊娠も子育ても実験に過ぎなかった田宮に芽生えた母性、笑う気持ち良さ、そして最後に取った行動…。(深津絵里の熱演もあって胸に迫るものがあった)
新一とミギーの友情も一つの可能性だ。
人間も寄生生物も、学び、進化出来るのなら…。
人間こそ、この地球の寄生獣ではないか?!
市長役の方の台詞ですが、この映画はこの一言に尽きますね・・・・
掛け替えのない地球、大事にしたいものです。世界中の国家の指導者
や企業家、政治家、官僚なんかにぜひ聴かせたいです!!!