「生きる意味を問いかける、過激で深い社会派ムービー。」寄生獣 完結編 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)
生きる意味を問いかける、過激で深い社会派ムービー。
【賛否両論チェック】
賛:人間としての生きる意味や、生きる価値等の問いかけが多く、改めて深く考えさせられる。演者さんの熱演・怪演も見事。
否:グロいシーンが多く、苦手な人には不向き。ラブシーンの必要性にも疑問が残る。
さすがは完結編。人間と寄生生物との生き残りを賭けた激しい戦いの模様が、CGを駆使して非常にリアルに描かれています。そんな中で、寄生生物という異種の脅威にさらされた人類が、改めてその在り方を問いかけられていく様子に、深く考えさせられるものがあります。
「人間どもこそ、地球を蝕む“寄生虫”そのものではないか!!」
という広川の言葉が、胸に刺さります。そして、そんな状況下でもなお、愛する人を守ろうと奔走する新一の姿も、とても印象的です。
描写はかなりグロくて、正直よく分からないラブシーンもありますので、お子様や苦手な方には不向きだと思います。前作の知識も必須なので、気になった方は、是非「PART1」からの鑑賞をオススメします。
プロの方のご意見なので、あえてコメントします。
あのラブシーンは不要だったと私も思いますし、概ねご意見には賛同します。ただコメントで触れられていませんが、後藤を倒す決定打となったのが放射性物質だったと言うことはどうお考えでしょうか。私は、あれはやるべきではなかったと思います。監督は東京新聞のインタビューで「デリケートな問題なので躊躇(ちゅうちょ)したが、そこを避けて通ると、この作品をやる意味がない。ダイオキシンのままやってみたら全然だめなんですね」と言っています。言っていることは分かりますが、だったら被害を受けた地域にもっと配慮して欲しかったと思います。あの描写では、震災がれきに高濃度の放射性物質が含まれているとしか解釈できないし、それほど高レベルの放射性物質がある中で戦ったのなら新一の体にほとんど影響がないのは不自然です。今に向き合って作るのなら、もう少し科学的に納得できる描写にすべきだし、なにより偏見を助長するような描写にならないよう配慮すべきではなかったかと思います。今のところ、批評でもこの点に触れたものがないのが残念です。