劇場公開日 2014年2月14日

「様々な感覚を覚えてしまう作品」エヴァの告白 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 様々な感覚を覚えてしまう作品

2025年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2014年 少し前の作品
この物語は一言で片づけられない。
受け取った感覚も複雑だ。
邦題では主人公エヴァによって、物語の中で明かす真実や心情を象徴する表現で、よりドラマチックな印象を与えるが、原題名である「移民」はエヴァの立場や社会的背景に焦点を当てたシンプルかつ象徴的なタイトルとなっている。
時代背景である1921年
第1次世界大戦が終わったころで、妹の症状に見られるスペイン風邪
加えてこの年から始まった移民の制限 禁酒法
エリス島という場所 エヴァのような移民にとって非常に厳しい検査があった。
さて、
この物語に登場する似たような言葉
ゴミ 自由 神
ゴミは、移民船の中やごみのような生き方 そしてブルーノが自身を表現したクズ野郎
自由は、自由の女神像 移民が求めたもの
神は、エヴァ達キリスト教徒にとっての絶対 教会 聖母マリア
そしてブルーノ
彼は移民局でエヴァを見る。
彼は移民の中から「モノ」になりそうな女性をピックアップしていた。
商売はショーと売春
結局、移民などはこのようなことでしかお金を得る手段はないのだろう。
しかし、ブルーノはエヴァの美しさに惚れてしまう。
この彼の想いは最後のシーンによく表れていたが、そもそもブルーノはエミールと違い誰かを本気で好きになったことがなかったのかもしれない。
それがどんなことなのか、初めて経験しているのでよくわからない。
エヴァは掛け金を盗んだ。
それを見て見ぬふりをしておきながら、軽いスキンシップさえ拒むエヴァを激しく問い詰めた。
この時点でブルーノにはまだ恋心のようなものは無かったのだろう。
他の女性と同様のことをさせているうちに、徐々にブルーノの気持ちに変化が現れたのだろう。
移民とか女性は商売道具
ただし、手厚く保護することで、彼女らは言うことを聞き、思い通りになる。
お金が必要だというエヴァに売春をさせることもいとわない。
同時に感じる違和感
みんな同じ仲間のはずが、エヴァだけが贔屓されていることに仲間の一人が気づき始める。
少しばかり手にしたお金で叔母宅へ行き、翌朝警察に通報される。
この叔父の所業は、文字通りクズだろう。
警察にもコネがあるブルーノは、移民局へ移送されたエヴァを引き取りに行ったが、この時すでに彼の中には特別な思いがあったのだろう。
この彼の特別な思いが何だったのか?
ここが余白として秀逸で面白いが、ひとことで言えない。
移民がブルーノの元で働きながら自分なりの生き方を作り、それなりに幸せ感を持っているのが通常だった。
ところはエヴァはブルーノに助けられておきながら、彼をクズだと揶揄する。
彼女の視点は移民局に拘束されている妹を助け出すことだけに当てられていた。
この変わらない人間性を持った人物を、彼は見たことがなかったのだろう。
エヴァの言う通り、移民を囲って大儲けするブルーノ自身の人間性が、それしかないからそれをすせざるを得ないエヴァという人物の生き方とブルーノの生き方を比較させるのだろうか?
エミールとの出会いと、彼がエヴァを気に入ってしまったことをいち早く察知したブルーノ
ケンカ ナイフでの脅し そして殺人に至ってもなお、エヴァへの想いを変えることができない。
ブルーノは自分の生き方を神に問われれば、罪だと答えるしかない。
妹を必死で助けようとしているエヴァとの違いは根本的なもので、お金で買えるものではない。
それに気づいた時、ブルーノが最後にできることは、その奥の手を使わずにいたことで、それとはお金で妹を施設から出すことだった。
できることをしなかったのは、そうなってしまえばエヴァは確実に去るからだ。
それは随分前からわかっていたこと。
だから自身をクズ野郎と言った。
移民
あるアメリカ人から見た移民
それはお金を生むもので、単なる商売道具だが、それで彼女たちが幸せであれば文句はないはずだと考えていた。
ブルーノはそんな一般的な移民を数多く見てきて、そう結論付けていた。
しかし、ポーランドから来た娘は違った。
妹を何とか救いたい一心でお金を作っていた。
「恥を知れ」
お金を盗んだ彼女にそう怒鳴ったが、その言葉はそのままブルーノ自身に返ってきた。
警官にボコられ、フラフラになりながらエリス島にやってきた。
妹と再会出来、船に乗って去るエヴァと、鏡を通して部屋から去るブルーノの姿は、完全に別世界を意味するのだろう。
不可能なことを、あらゆる手段を使って成し遂げたエヴァ
彼女が勝ち取った「実」
反対に、お金儲けのために移民を使って働かせるという「現実」こそが正しい生き方だと思っていたブルーノだったが、人を想うということがどんなことなのかをエヴァを通して知ったのだろう。
目には見えないものは「虚」なのだろうか?
目に見えない心の震えは「虚」なのだろうか?
「実」だと信じてきた商売やお金
それさえ振り切ってまでエリス島にやってくるほどの心の震えのなかに、ブルーノは「実」を感じたに違いない。
物語は、決して交わることのない二人の世界を描いていたが、鏡の中のドアから外へと去ったブルーノは、自分が最後にしたことの意味を考え始めるのだろう。
生きていくのにも困難な時代(今も)
皆追い求めているお金とは、実際には虚構であって、自分自身をその自由意志で動かすものの正体こそ、心なのだろう。
象徴的で一言では駆られない物語だが、いい作品だと思う。

R41
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